山中慎介氏&岩佐亮佑対談…パート2 山中氏の胸中は「挑戦者なのにガウンなんか着やがって…」試合後のリングサイド秘話

スポーツ報知
2011年3月5日、東京・後楽園ホールで行われた日本バンタム級タイトル戦で、1回に打ち合う日本王者・山中(右)と岩佐。10回TKO勝利で山中が王座初防衛に成功した

◆報知新聞社後援 プロボクシング世界戦 ▽IBF世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 岩佐亮佑―TJ・ドヘニー(16日、東京・後楽園ホール)

 IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(28)=セレス=が、16日に同級1位TJ・ドヘニー(31)=アイルランド=との2度目の防衛戦(報知新聞社後援)に臨む。試合を前に日本テレビの企画で、2011年日本バンタム級タイトルマッチで敗れた元WBC世界同級王者・山中慎介氏(35)と対談。収録のもようは、15日午後11時からの日本テレビ系「NEWS ZERO」内で放送される。スポーツ報知では、4回に渡って対談のもようをネット配信する。

 (当時の試合映像を2人で視聴しながら)

 岩佐(以下、岩)「山中さんはすぐに世界行かれたじゃないですか。それで会場とか、テレビの(山中氏の)紹介で僕は苦しめられましたよ(笑い)毎回、自分がスーパースローでバーン(とパンチを打たれる)みたいなのを、黙りながらテレビで見ていた記憶もある」

 山中氏(以下、山)「もっと俺に打ち込んでるのもあるのにね(笑い)」

 岩「打ち込まれてるのばっかり使われて、けっこう複雑でしたね。あの時は。28歳ですか、29?」

 山「27。(映像内の岩佐は)怖いもの知らずやな。『挑戦者なのにガウンなんか着やがって』って思っていた(笑い)」

 岩「俺、日本タイトルだからやっとガウン着れるって思って(笑い)」

 山「俺、用意してなかったから悔しかった(笑い)」

 岩「そんな記事見た気がします。懐かしいっすね。もう気合入れなきゃほんと倒されると思っていた」

 ―映像を見てもらって、改めて互いの強さはどこにあったか。

 山「改めて1ラウンド目からずっと(ポイントを)取られてたんですよ。3ラウンドくらいまで全部取られてた。始まってからすぐに当てる距離と当てるタイミングとかは持っているなっていうのはありましたし、実際クリーンヒットってのは岩佐君のほうが多かったですから。それでも僕はジャブを打っている感覚は悪くなかったので、後から見て取られている、あっ取られていたんだって思うくらい自分の中では感覚はよかったんですよ。感覚はよかったけど、それ以上に取られてたんだって。試合始まって、タイミングとか当てるポイントをすぐに把握できるボクサーなんやなって」

 ―岩佐選手は

 岩「僕の試合だけじゃなく、山中さんはダウンを取られても変わらない。普通、ダウン取られたら劣勢になるというか、詰められるのが多いけど、山中さんはケロッとしてるというか。僕から見ても効いてないって思うんですよ、そのまんま伝わって来るっていうか。効いているはずなのに打ち返してくるし、力入っているし。だから、完全な自信をこっちが持てなかったというか。当たっても『あれ? また何か来るのかな』みたいな。だからずっと試合を支配されている感じ。ずっと狙われている感じ。そのプレッシャーが山中さん本当に強いなって思ったし、そういう感覚になったのは初めてだった。もちろんパンチも強いですけど、僕がやってて思ったのはそういう技術じゃないプレッシャーというか、そういう駆け引きが山中さんすごいなって思いましたね」

 山「それは試合後の記事でもよく言ってくれてたよね」

 岩「はい。そこですかね。今までの試合ではなかったですね」

 ―今だから言える互いの弱点や想定してたことは。

 山「技術的なところでいうと、弱点ってほとんどなかったですからね。ガードはそんなになくても目がいいし、勘がいいし、上体の動きがめっちゃうまいし、逆にそういった自信が隙を生むかなとも思ってたし。相手の弱点というより自分が本当に自信満々でいけたというのは大きかったですね。本当に当時弱点っていうのは、なかったですね」

 岩「う~ん、弱点かぁ。そこを狙ってというのはなかったですね。やっぱ自信満々っていうのがあったので『そんなこと気にしなくても勝てる』みたいなイメージだった。全部勝てばいいやみたいな。全部勝てるってイメージだったので。弱点とか見てはなかった。フタを開けてみれば、逆に何も突くところがなかった」

 山「実際、構え合って少しジャブが遠かったってイメージですけど、距離が少し近かったんですよ。それで僕のジャブも届いたし。そこからつながったし、その半歩の距離っていうのが大事だった。特にサウスポー同士なんで、近くなりますよね。それが大きかったですよね」

 ―試合後の心境は

 山「試合が終わってからの心境…う~ん、まあ世界タイトルマッチで12度防衛させてもらいましたけど、その中でもモレノ戦で勝った時の喜びに近かったですね。一緒のような感覚でした、岩佐君に勝った時は。それくらい、なんかこう自分でも激しい試合をしたという気持ちもあったし、それで勝ち切ったということもあったので、勝ってコーナーに上って喜んでいる瞬間っていうのは似た感覚はありましたね。それでも、負けた選手ってふてくされるというか、勝った相手のところに来ないじゃないですか。でも、岩佐君は来てくれて一言目に『山中さん、殴りすぎ』って言ったんですよ(笑い)俺は『やかましいわ』って言った思い出があるんですけど(笑い)それでも仲良く。あの時一緒に写真撮ったの覚えてる?」

 岩「えーっと…リング下ですよね。ああ、そうですね、殴りすぎ…いや、ちょっと違うんですけど。会った瞬間に、僕の顔が腫れていて山中さんが『えっ、大丈夫?』みたいな。『ああ、腫れてるね、大丈夫?』って。『大丈夫じゃねぇよ!!』って(笑い)『殴りすぎですよ』って。そんな感じですよね。それで『やかましいわ』って、また腹を殴られたんですよ」

 山「じゃあ、俺が悪かったな(笑い)それでも仲良く一緒に写真撮ったので、あの一枚は今でも本当に記念ですね」

 岩「確かに僕はもう完敗だったので、すがすがしく負けて『ああ、もう今回は本当に勝てなかった』と思った。直後は落ち込んでいたんですけど、本当に完敗だなって思ってあいさつ行こうと思った。変にすがすがしかったですね。初めての負けだったんですけどね」

 ◆日本バンタム級タイトルマッチVTR(11年3月5日、東京・後楽園ホール)当時8戦全勝でランク1位の指名挑戦者・岩佐と初防衛に挑む王者・山中の無敗対決。序盤は岩佐がリードし、2回に左ショートで山中をぐらつかせたが、冷静な王者は中盤から左ボディーを軸に主導権を握る。自慢の左で再三好打し、最終10回にロープ際に追い込んで一気に7連打。最後は山中の左ストレートが顔面を捉え、レフェリーストップでTKO勝ち。

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