田中恒成、3階級制覇に父・斉さん「弱者に優しい男前な王者や」…手記

スポーツ報知
3階級制覇を達成し、トレーナーの父・斉さん(右)、妹・杏奈さん(中)と記念写真に納まる田中

 同級1位・田中恒成(23)=畑中=が、王者・木村翔(29)=青木=を判定2―0で破り、WBAライト級スーパー王者のワシル・ロマチェンコ(30)=ウクライナ=に並ぶ世界最速タイ12戦目での3階級制覇を達成した。国内ジム所属の3階級王者は7人目で、田中は最年少23歳で達成。無敗での到達は井上尚弥(大橋)以来2人目。父でチーフセコンドの斉(ひとし)トレーナー(51)が独占手記を寄せた。

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 恒成の3階級制覇に感無量や。おめでとう。3歳から空手を始めて11歳でボクシングに転向。積み重ねてきたものには自信がある。歯を磨くのと同じように毎朝走り、練習してきた。小学生だった亮明、恒成兄弟と冬のロードワークで缶コーヒーを3等分して飲んだりしたなあ。ボクシング以外、親子の会話はほとんどない。俺が口べた、感覚派やから。

 衝突は、しょっちゅうある。昨年末、チーム恒成の仲間約20人で決起集会をした時、恒成は「父さんのこと、ひとつも信用しとらん」と言いよった。その場がシーンとなった。続けて「だけど頼るのは父さんしかおらんから、もっと本気でやってほしい」と。何か温度差を感じたんやろうな。ショックやったが、ホンマの気持ちならそれでええ。皆にも「本気」を訴えたかったんやろ。俺たちはいつも直球や。ウソはない。

 あの発言の少し前に、俺は務めていた会社を辞め、トレーナー業一本に絞ると決めた。昨年9月、恒成は試合でパンチをもらい両眼窩底を骨折した。減量苦でもろくなっていた。恒成のせいじゃない。俺が試合を断ればよかった。後悔。俺も成長していかなあかん。上の景色を目指すなら2足のワラジは履けん。ボクシングは命がけやから。

 恒成は弱者に優しい男前な王者や。小学生の時、運動会のグラウンドを突っ切って、泣かされていたいとこを助けた。今でも派手なガッツポーズはしない。敗者への思いやり。目の前の試合を大切にし、体の成長とともに自然な形で4階級、5階級制覇といってほしいね。

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