【飛翔・村田inラスベガス】練習日誌「村田ノート」に記されたV2の先の夢

スポーツ報知
練習内容や反省などをノートに書き込む村田

◆プロボクシング世界戦 WBA世界ミドル級タイトルマッチ 王者・村田諒太―同級3位・ロブ・ブラント(10月20日、米ネバダ州ラスベガス・パークシアター)

 スポーツ報知では、米ラスベガスで初の世界戦に臨むWBA世界ミドル級王者・村田諒太の連載「飛翔 村田 inラスベガス」を20日(日本時間21日)の試合当日まで掲載。初回は、アマチュア時代にノートに記した夢「ラスベガスでビッグマッチ」について村田が語る。

 かつて「村田ノート」と呼ばれる練習日誌があった。練習時間やメニュー、狙いや反省がぎっしりと書かれている。スポーツ心理学の本をヒントに、練習効率を上げる狙いでアマ時代の2009年頃からメモを取るようになった。金メダルを手にした12年ロンドン五輪よりも前。はるか遠い夢として「ラスベガスでビッグマッチ」と記した。

 「まず夢のような目標を書いて、そこから人生の目標、競技の目標とか、50年後の目標から逆算して書く。何を今やればその夢のような目標に近づいていけるか。それで書いたことがある」

 常に手段を考えてきた。五輪直前には、ほぼ毎日、日誌の文末に「8月11日 ロンドン五輪で金メダルを獲れ“ました”。ありがとうございます」と過去形で締めた。成功をイメージするためだったが、現実はその通りになった。プロ転向後も「予定表」と題し、デビュー戦の13年8月25日から逆算。「今やるべきことが明確に見えてくる」と日々のテーマを設定した。しかし、大切な日誌も2年以上前にやめた。

 「つけていると依存する。(練習は)感覚でやっているので、感覚を文字にするとおかしくなる。あとは、ボクシングを考えない時間をつくらないといけないのに、日誌をつけるとずっと考えてしまう。それがしんどくて」。課題を“やらなきゃ”と意識し、クリアできないと負の感情が出る。それを嫌い、やり方を変えた。「一個、一個、積み重ねてその時に感じるものがある。その場、その場で人生を変えていくのが僕にとって重要」。臨機応変なスタンスが今の村田だ。

 ラスベガスでビッグマッチ―。だが、この言葉には続きがあった。村田は言う。「(今回は)ラスベガスで世界戦をやるってだけ。そこ(ノート)に書いてあったのは『パッキャオみたいに1試合で何十億と稼げる』とか、そういうこと」。自身と挑戦者の知名度から、世界的ビッグマッチでないことは承知している。「そこにまだたどり着いてない。まだ途中ですね」。ノートをやめ、目標までの走り方を変えても、かつて記した夢に向き合う気持ちに変わりはない。V2に挑む村田は、夢の途中にいる。(浜田 洋平)

 ◆ラスベガスでのビッグマッチ 2015年5月にWBA、WBC、WBO世界ウエルター級王座統一戦で、世界5階級制覇のフロイド・メイウェザー(米国)と世界6階級制覇のマニー・パッキャオ(フィリピン)が対戦。ファイトマネーは総額330億円で、試合はメイウェザーの判定勝ち。メイウェザーが引退宣言して臨んだ同年9月のベルト(米国)戦は最低保障が約38億円だった。ヘビー級のマイク・タイソンとイベンダー・ホリフィールド(ともに米国)が1997年の2度目の対戦で受け取ったのは、それぞれ3500万ドル(約42億円)とされている。

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