岩佐亮佑の米国ファンを沸かせた“勇気”「行くしかねぇや」6針縫う激闘から帰国

スポーツ報知
右まぶたを6針縫って帰国した岩佐亮佑(中)右はセレス小林会長

 プロボクシングの前IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(29)=セレス=が18日、米国から帰国した。16日に同級5位セサール・フアレス(27)=メキシコ=との挑戦者決定戦で2―0の10回負傷判定勝ち。昨年8月にTJ・ドヘニー(32)=アイルランド=に敗れて王座陥落したが、米国デビューとなった今回の再起戦で同王座への挑戦権を獲得し「本当に厳しい戦いだった。勝ててよかった。本当に自信になった」と息をついた。

 序盤から接近戦を仕掛けられた。「ものすごいプレッシャーをかけられて戸惑ったけど、逆に吹っ切れた。変に足を使うと巻き込まれるので打ち合った」と応戦。2回にバッティングで右まぶたを切り、中盤には同じ箇所がパックリと割れた。「下を向いたらボタボタって血が垂れた」と試合後に6針縫う激闘。「向こうは最初からかっ飛ばしてきた。5、6回くらいから吹っ切れた。行くしかねぇやと。後半は僕が突っ込んだに近いですね。来るところに正面から向かって行った」。過去の弱気な自分を捨て去り、勇気を持って立ち向かった。

 半年前のV2戦も覚悟を持って前に出ることをテーマに掲げたが、アウトボクシングに徹した相手を攻略しきれず、攻め手を欠いたまま判定負けした。引退が頭をよぎったが、昨秋に現役続行を決意。今回は20代前半のメラメラした気持ちを「取り戻すため」の試合だった。「何のために再起したかを常に自分に言い聞かせて戦った。闘争心とかは年齢のせいなのか、強くはなかったけど、絶対に勝ちたいのはあった。ちょっとは取り戻せたのかな」

 試合当日は午後2時に会場入りしたが、グラブをはめた後に試合順が急きょ変更。直前変更が2度行われ、ゴングは午後8時頃までずれ込んだが「米国の洗礼だった。いい経験。動じることなくリラックスして試合に臨めた」と対応。「向こうはお客さんの認め方が違う。メキシカンが多かったけど、僕が攻めれば盛り上がるし、応援してくれる。刺激になった。あの相手にアウェーで勝てたのは大きい」。初めて立つ本場のリングは格別だった。

 ドヘニーは1月に初防衛。次戦はWBA王者ダニエル・ローマン(28)=米国=との統一戦の可能性もある。岩佐の相手は未定だが、次戦はチャンピオンベルトを懸けた試合になる。「下手くそな試合だけど、少しでも変われたのは収穫。首の皮一枚つながった。あとは次の試合で返り咲くだけ。次が勝負」。半年で死地からよみがえった岩佐は、再び世界の頂を見据えた。

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