田中恒成V1…失意救った恩人に「敬意」打ち合い3―0「いい試合ができて感謝、光栄」

スポーツ報知
8回、田中の左フックが田口(右)の顔面をとらえる。3―0の判定勝利で初防衛に成功した(カメラ・谷口 健二)

◆プロボクシング▽WBO世界フライ級(50・8キロ以下)タイトルマッチ12回戦 ○田中恒成(判定3―0)田口良一●(16日、岐阜メモリアルセンターで愛ドーム)

 WBO世界フライ級王者・田中恒成(23)=畑中=が、挑戦者で元WBA、IBF世界ライトフライ級王者・田口良一(32)=ワタナベ=を3―0の判定で下し、初防衛に成功した。田中は果敢に打ち合い、最大10ポイント差をつけた採点で圧勝。平成最後の世界戦日本人対決を制した。成績は田中が13戦全勝(7KO)、田口が27勝(12KO)4敗2分け。(観衆5500)

 田中が念願かなって実現した田口との大一番で、前日会見の宣言通り打撃戦を繰り広げて制した。“中京の怪物”はテレビ全国放送の初メインで大差判定勝ち。ベルトを腰に戻すと「いい試合ができて感謝、光栄。田口選手の(この一戦にかける)気持ちは分かっていた。敬意を表して打ち合った」と敗者へ最大の賛辞を贈った。終了直後に抱擁した田口はフラフラだったが、田中は「それぐらい出し切り、それぐらいの思いで立ち続けていた。一番心に残っている。教えてもらった」と謙虚に語った。

 序盤から軽快にボディー打ちでダメージを奪うと、田口が中盤失速。田中は7回に右ストレートでのけ反らせ、8回に左アッパーを食い込ませた。陣営の畑中清詞会長(52)の「スピードの差とボディー攻撃で勝負が決まる」との狙いが的中。ポイント優位を自覚する最終12回も逃げ足を使わず「倒しにいった」。故郷の会場は熱狂。KO勝ちを逃して父・斉(ひとし)トレーナー(51)から「ずるさが足りない」と厳しい言葉をもらった王者は「打ち合う意識ばかりで、パンチをもらい過ぎた」と反省も忘れなかった。

 17年12月。失意のどん底にいた田中を救ったのは、他でもない田口の一言だった。同9月に田中はWBO世界ライトフライ級王座のV2戦で勝利も両眼窩(がんか)底を骨折。自ら売り込み、両陣営が開催で合意した当時WBA同級王者だった田口との一戦が白紙となり、自信を失っていた。

 都内のワタナベジムを訪れて直接謝罪。一人上京してきた田中を気遣い、ジム近くのJR五反田駅前の喫茶店に誘った田口から「試合から逃げるヤツだなんて全然思っていないよ」と慰められた。その言葉は今でも田中の脳裏にある。実現した決戦の舞台で、最大のリスペクトを込め、パンチを繰り出し続けた。

 田中は王座奪取し、年間最高試合に選ばれた昨年9月の前王者の木村翔(青木)戦に続き、日本人対決2連勝。「(田口戦も)また年間最高試合ですか」とおどけた。年内はフライ級王座を防衛するのが陣営の基本線だが、田中が公言する4、5階級制覇への期待も膨らむ。腫れた左まぶたをさすった王者は「3日後に治るかな」と19日の中京大経済学部の卒業式を気にかけ、23歳の青年の顔に戻った。しばし休息し、次のリングへと向かう。(田村 龍一)

 ◆田中 恒成(たなか・こうせい)1995年6月15日、岐阜・多治見市生まれ。23歳。3歳から空手を始め、小学5年でボクシング転向。岐阜・中京高(現中京学院大中京高)で全国4冠。高3時の2013年11月、B級(6回戦)でプロデビュー。15年5月、国内最速5戦目でWBO世界ミニマム級王座獲得。16年12月に同ライトフライ級王座を獲得。18年9月には同フライ級王座を奪取し、世界最速タイ12戦目での3階級制覇を達成した。身長164センチ。右ボクサーファイター。

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