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実態と乖離する日大側の苦しい説明…学内での位置づけ見直しが必要

2018年5月25日16時0分  スポーツ報知
  • 22日の会見で深々と頭を下げる日大アメフト部の宮川泰介選手

 日大アメリカンフットボール部の選手による悪質タックル問題は、相手選手が被害届を出したことで刑事事件化することになった。

 これまで日大側は一貫して内田正人前監督ら指導者の「指示」を認めていない。「壊せ」との言葉ついて「最初のプレーから厳しく当たれ」という意味だった、という“新解釈”も披露した。宮川選手の会見での話や取材で得た証言を聞く限り、それこそ実態と「乖離(かいり)」した苦しい説明ではないか。今後、監督やコーチの具体的な指示の内容や、傷害罪の教唆か、それとも共同共謀正犯に当たるのかなどが焦点になる。虚偽の説明が明らかになれば、一層、厳しい追及を受けることになる。

 一方で、大学を所管する文科省、スポーツ庁は再発防止や部活動のあり方について早急に議論を進め、再発防止策や組織整備を進めるべきだ。政府は大学スポーツの目指すべきモデルとして、全米大学体育協会(NCAA)をモデルとした「日本版NCAA」を設立する方針を示している。設立に向けた一連の議論の中で、重要視されたのは選手の安全をどう確保するのかという点だった。

 国内の大学部活動の多くは「任意団体」に過ぎない。いわば、サークル活動であり、監督はOB会などが決めるケースもある。不慮の事故や今回のような不祥事が発生した場合、責任の所在も明確になっていない。問題が発生した場合に対応するのは大学なのか、連盟なのか、それともスポーツ庁なのか。誰がその処分を下し、誰が決めるのか。各団体の権限などがあいまいなままでは物事は進まないだろう。

 少子化が進み、受験者数が減少する中、特に私大は生徒集めに必死だ。その中でスポーツの持つ発信力や影響力に頼り、力を入れている大学も多くある。日大も2019年の創立130周年を前に「スポーツ日大」を掲げてきた。だが、本気で大学スポーツに取り組むなら、これまでの運営体制や部活動の学内での位置づけを大きく見直す必要がある。

 すでに京大アメフットボールは部活動を一般社団法人化するなどの取り組みを進めている。参考となる事例はいくらでもある。大学経営者は、これまで続いてきた部活動のあり方について真摯(しんし)に向き合わないと、今回のような深刻な社会問題を引き起こす可能性があると認識したはずだ。

 アメフットの競技人口は約2万人と少ない。野球と同様、用具に十数万円かかることも競技人口拡大のネックになっている。危機感を抱いた大学アメフット指導者が定期的に会合を開き、安全対策について議論を進めている中で今回の問題が起きてしまった。

 「このままでは大学アメフット、日本のスポーツはダメになる。だからこそ我々がやらなければ」―。大学チーム幹部が口にしたその言葉にかすかな希望を感じた。(記者コラム・久保 阿礼)

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