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飯塚翔太がつかんだ金メダル級の銅 雪辱の最速ラップ

2018年9月13日16時2分  スポーツ報知
  • アジア大会の男子4×400リレーで銅メダルを獲得し、たたえあう(左から)ウォルシュ・ジュリアン、小池祐貴、飯塚翔太

 銅は「金と同じ―」。いつからか使われるようになったこの言葉を、8月のジャカルタ・アジア大会でかみ締める機会があった。陸上男子1600メートルリレー(8月30日)で、リオ五輪400メートルリレー銀の飯塚翔太(27)=ミズノ=が手にした銅メダルが、まさしくそれだった。アンカーを走り終えた第一声「いや~、疲れました。めっちゃ」が清々しく、印象深かった。銅だけど、本当に金メダルをあげたいくらいだった。そう思った理由は、リレーの1日前の8月29日にさかのぼる。

 男子200メートル決勝。日本歴代2位の自己記録20秒11を持つ飯塚の本命種目で、20秒68と力を出し切れず6位だった。ずっと目標にしてきた表彰台の頂点には、小池祐貴(ANA)が立っていた。レース後、「悔いはない」と言った。でも、体は正直だ。29日の夜は、全然眠れなかった。夜中の2時まで、目はさえたままだった。「何も貢献できず、エネルギーを与えられないのは悔しい」。日の丸を背負う責任感で気持ちに折り合いをつけ、敗戦を引きずらない精神力は本当に見事だった。本職の400メートルリレーでは、飯塚の代わりに多田修平(関学大)が第2走者を務めて圧勝の金メダル。飯塚もまた、悔しさを押し殺して本職外で貢献する、金メダル級に価値のある走りをしてくれたと思った。

 今季は186センチの長身を生かし切ったダイナミックな走りの習得を掲げてきた。冬季は、短距離選手では異例のメキシコ高地合宿で心肺機能を強化。6月の日本選手権200メートルでは20秒34で2年ぶりVを飾った。日本陸連関係者の手動計測によると、1600メートルリレーを走った4人(ウォルシュ・ジュリアン―小池―安部孝駿―飯塚)の中で、飯塚は最速ラップの44秒台をたたき出していた。スタミナとスピードの両立が要求される400メートルで、確かな力を発揮していた。

 ごはんは玄米、肉は低脂肪高たんぱくの馬肉を熊本から取り寄せる。コンディション維持に細心の注意を払う飯塚は、29歳で迎える20年東京五輪にもまだまだ上昇曲線を描いていけるだろう。今月21~23日には、全日本実業団対抗選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)で国内凱旋(がいせん)レースを飾る。10年世界ジュニア選手権200メートルを制し、“和製ボルト”と称された逸材。ジャカルタのホロ苦い夏を、きっと貴重な糧にできるはずだ。(記者コラム・細野 友司)

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