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井上貴子とアジャ・コングの知られざる絆

2018年10月23日16時0分  スポーツ報知
  • 第1試合、アジャ・コングが井上貴子(下)を反則技で攻める
  • 第1試合終了後、アジャ・コング(右)に称えられる井上貴子

 LLPW―X・井上貴子(48)のデビュー30周年記念イベント「己を磨く!女は輝く!」が先日、東京・後楽園の東京ドームシティホールで行われた。井上貴子と言えば、元祖アイドルレスラーとして全日本女子などさまざまなリングで戦ってきた。

 このイベントでは、レスラー人生の集大成としてメインで同期の井上京子、よき先輩の堀田祐美子、所属団体代表の神取忍と組んで8人タッグを戦った。このほか試合の合間には、アイドル時代に出した曲「奇蹟の扉」、京子とのデュエット曲「ワン・ウエイ・ドリーム」など当時の振り付きで3曲を熱唱。1988年デビューの同期という歌手の相田翔子とのトークショーも行った。まさしく歌って、踊って、戦って。井上貴子の全てを出し切ったイベントとなった。

 この日、貴子は第1試合にも登場した。事前の発表では対戦相手はXとなっていて伏せられていたが、登場したのはアジャ・コング。アジャは全日本女子時代の2年先輩。貴子にとってはシングルマッチで「一度も勝ていない」(実は09年6月に勝利している)という因縁の相手。「30周年のイベントでは、ぜひ戦いたい」と自らが指名した。

 試合は、開始からアジャがパワーで貴子を圧倒した。一斗缶や松葉づえで殴り、コーナーに立てかけられたスポンサーボードで貴子をボコボコにした。しかし、セコンドについていた京子が乱入すると、貴子は得意のスタンガンで反撃。裏拳を打ち込んでから再び京子の助けを受けてスタンガン攻撃を仕掛けようとしたが、アジャにかわされ、逆に裏拳を浴びて敗れた。

 貴子は、敬意を込めてアジャを「アジャ様」と呼ぶ。2年先輩ということもあるが、2人には全女時代からつながる深い絆があった。貴子とアジャは同じ時期に全女のオーディションを受けている。「アジャ様とぶつかった時、お互いごめんなさいと交わした笑顔がすごく優しい顔だったことが印象的だった」と貴子は振り返る。貴子が練習生となってからはアジャにヘビメタのカセットテープを貸したこともあった。

 その後、2年遅れで貴子がデビューすると、アイドルの貴子とヒール(悪役)のアジャという分かりやすい構図だったため、テレビ収録のある試合では、よく対戦していた。テレビ収録とあって、アジャはいつもより激しく貴子を攻め立てた。

 リング上では敵だが、リングを下りると同志だった。アイドルとして活動する貴子と、バラエティー番組などに出演するアジャ。「アジャ様とは全女の広報担当ですねと話したこともあります」と貴子は言う。アイドル活動が忙しくなると、周囲からの批判が激しくなった。その時にも一番の理解者はアジャだった。レスリングの練習をしていないと言われると、アジャは「彼女はきちんとやってますよ。彼女よりやってない暇な人はどこを見ているんでしょうね」とかばった。

 試合後、アジャは「もう1回やろう。でも、ビリビリ(スタンガン)と京子はなしね。一斗缶もなしにするから」と再戦を誓った。一方、貴子も「たぶん一生勝たなくていい相手だったなという感じですが、またやりたいです」と応じた。「イベントはこれで打ち切り。35周年は絶対にやらない」という貴子だが、引退はしない。記者は35周年のメインイベントが「貴子対アジャ」だとひそかに思っている。

 (記者コラム・高田 典孝)

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