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羽生結弦、練習での転倒直後の指さし確認

2018年12月1日12時0分  スポーツ報知
  • 羽生結弦(ロイター)

 一戦に懸ける思い。闘う生きざま。そこに競技の差はない。夏も冬も関係ない。東京五輪のページですが、今回は氷の話で。

 羽生結弦のロシア杯。フリー当日練習での4回転ループ転倒は真後ろで見ていた。ぐにゃりと右足首が曲がった。うずくまった後に起き上がると、リンクを指さしながら何かを確認。練習を途中で切り上げた。

 一度会場を離れる時の顔はもう、闘う顔になっていた。やると決めた時の羽生はやる。集中の仕方、全身から放つ気。それこそ異次元だ。完全にスイッチが入っていた。

 構成を変えることは想像できた。結果、想像をはるかに超えていた。ジャンプ7本中、予定表と同じ順序と組み合わせで跳んだのは3本目の3回転ループ1本だけ。練習での転倒後の指さし確認は、構成を練り直すイメージ作業だった。「ここで何をやろうか、あそこで何をやろうかって考えながら、もうあの時には組み立てていた」というから恐れ入る。

 練習を途中で切り上げてから6時間後。羽生は練習でも通したことがない構成を、ぶっつけで滑り切った。軌道も変わる。間合いも変わる。頭をフル回転させながら、ジャンプを音に溶け込ませた。指先まで感情を込めたイナバウアー、プルシェンコをほうふつとさせる最後の高速スピン。力を出し尽くしたのだろう。翌日の表彰式での表情は、別人のようだった。少年のように幼いものに変わっていた。

 今後については、右足首の状態を考えると予定していたスケジュール通りとはいかない可能性が高い。前戦のフィンランド大会後に「試合ってやっぱり楽しい」と笑顔を見せていたばかり。心中は察するに余りある。誰より悔しいのは羽生自身。無理することはない。今季を迎える前に言った「自分のために滑る」シーズンにしてほしい。(記者コラム・高木 恵)

 ※「スポーツ報知」11月27日付紙面に掲載

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