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山あり谷ありの相撲道 山口「第2の青春」

2018年12月9日17時59分  スポーツ報知
  • 大喜鵬

 相撲人生をかけた勝負の1年。「第2の青春」と明るい表情で話すのは、宮城野部屋の幕下力士・山口(29)だ。11月の九州場所での朝稽古。一際大きな声を出しながら、四股を踏み数を数えていた。元幕内力士で当時のしこ名は大喜鵬。学生時代は数々の栄光を手にして幕内も経験したが、現在は幕下で5場所連続負け越しと苦しんでいる。11月の九州場所も2勝5敗。「積極的な相撲が取れてない。自信も無いから」と、反省ばかりが口をついた。山あり谷ありの相撲道。その道も、最後の一山を迎えようとしている。

 相撲を始めたのは小学4年生。当時から身体能力は抜群だったという。「中学生の時、体重130キロでバック転やってましたから。逆立ちも得意だったし」。中学横綱にも輝き、高校、大学でもタイトルを獲得。大学生で国体横綱となり、幕下15枚目格の付け出し資格を持って12年春場所で初土俵を踏んだ。

 所要3場所で関取になり、十両も4場所で通過。しかしその後は6場所で幕下に陥落した。「若いときは相撲をなめてた。四股がどこに効くのか分かってなかった」。当時は大の稽古嫌い。相撲を取ることは好きだったが、基礎鍛錬を怠って通用するほどプロの世界は甘くなかった。

 14年九州場所ではケガも重なり、三段目まで落ちた。16年九州場所で再び十両に上がったが、今度は右膝半月板の手術の影響で幕下生活に戻った。「2回目ですよ。1回3段目まで落ちて。ここが一番苦しい時期」と振り返る。

 だがこの経験こそ、山口が相撲と向き合うきっかけとなったのも事実。度重なるケガに膝の手術で、下半身の動きが固くなり思うように動かせなくなった。「今は、朝起きてから腰を下ろすのにも一苦労。四股の大切さを学んでいる。朝起きてすぐに屈伸できる若手がうらやましいです」。下半身の強化だけでなく、股関節の柔軟性も必要な四股運動。自身の経験も踏まえて、今では弟弟子たちに基礎の大切さを教えている。

 年に1回の九州場所は、気合の入る場所でもあった。福岡・飯塚市の出身。同市の商店街では、祖父の博さん(80)がたい焼き店を営んでいる。幼少期しか過ごしていない故郷だが、場所を迎えると必ず訪れエネルギーを蓄える。「今回も2回おじいちゃんの所に行きました」。おすすめの味は「カスタードと、最近新しく出た栗」だ。

 店には自身の写真も貼ってあり、来年の九州場所では番付も上げ、雄姿を見せたいところ。「来年は勝負の年。切り替えて稽古をしていけば、自信もつく。我慢して一生懸命、力を戻します」。決して山口の表情は暗くない。苦しいはずの今を、こう表現した。「第2の青春だと思ってます」。相撲が楽しいからこそ、前向きになれる。(大谷 翔太)

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