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64年五輪レスリング金メダル渡辺長武、「ライオンのおりの中に入った」

2019年1月12日12時0分  スポーツ報知
  • 64年大会のレスリング・フェザー級を圧倒的な強さで制した渡辺

 64年大会の日本選手で金メダル確実と言われていたのが、重量挙げの三宅義信(79)とレスリングの渡辺長武(おさむ、78)だった。

 渡辺は61年のソ連・欧州遠征から五輪前まで180連勝と無敵の強さを誇った。62年の米国での世界選手権では6試合全てでフォール勝ち。「あの強さは人間じゃない」ということから“アニマル”と評され、技の正確さは“スイスウォッチ”と呼ばれるほどだった。

 実家の豆腐店を手伝うため、子供の頃から重さ100キロの石臼を回していたことがレスリングのパワーにつながった。日本代表に選ばれてからは日本協会・八田一朗会長のもとで独特のトレーニングをこなし、強さに磨きがかかった。八田イズムと呼ばれる指導法には、選手を動物園でライオンとにらめっこさせることも。「上野動物園でライオンのおりの中に入ったことがあった。怖かったけど、何でも命懸けでやっていた。負けは死と思え、という気持ちでした」

 左利きだったが、八田会長から「左右どちらからでもタックルできるようになれ」と言われ、箸を持つ手を右に変えるなど、私生活でも右手を使うようになった。その成果から、相手は渡辺がどちらからタックルに来るか読めなくなり必殺技となった。

 「目を後ろにも持て」と目隠しをして練習を続け、相手の“気”が分かるようにもなった。「人の10倍やれば世界一になれるんですよ。私は天才と呼ばれるけど、天才ではない。やはり人の10倍、100倍努力しました」。どんなに疲れていようとも、就寝前に腕立て伏せ200回を欠かすことはなかった。準備万端で五輪を迎えた。(編集委員・久浦 真一)

◆渡辺 長武(わたなべ・おさむ)1940年10月21日、北海道・和寒(わっさむ)町生まれ。78歳。士別高からレスリングを始め中大に進学。62、63年と世界選手権を連覇。全日本選手権も5度優勝。160センチ。

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