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内村航平が異例の“呉越同舟合宿”で感じたこと 中国の良さ+日本の良さ=ジャパンウェイの確立

2019年2月15日16時54分  スポーツ報知
  • 中国との合同練習に参加した内村航平(手前)と白井健三

 日本のお家芸として、長らく世界のトップに立ち続けている男子体操が、変革期を迎えている。18年世界選手権は2007年大会以来の屈辱となる金メダル0個で団体も銅メダル。東京五輪の金獲得に黄色信号がともった。水鳥寿思強化本部長は「個人戦は、ミスを1つもしていない中で金メダルがなかった。日本よりも中国(1位)やロシア(2位)が力を付けてきている」と危機感を募らせた。

 水鳥氏はさらに、「変える機会は今年しかない」と強調した。東京五輪まで残り1年半。団体での金メダル奪還に向け新たな強化策に打って出た。

 目玉は強豪・中国との合同合宿。ライバル関係にある両国は、団体で2000年シドニー五輪から16年リオ五輪までの5大会で、日本が金メダル2つ、中国が3つを獲得し、常に頂点を争ってきた。しかし18年世界選手権では、金メダル0個の日本に対し、中国は団体優勝と種目別でも金2つを獲得。大きな差を見せつけられ、内村航平(30)=リンガーハット=は「何かを変えないといけない」と、深刻に語った。

 この合宿が実現するに至ったのは、日本が中国に敗れたからではない。18年7月から計画は動き出しており、「常に日中が世界のトップに立ち続けよう」という考えで一致。19年1月下旬には日本が中国へ、2月中旬からは中国が日本へやってきて、極めて異例の“呉越同舟”合宿が行われた。

 約2週間の合宿で、水鳥氏は日本と中国の違いとして2つのポイントを挙げた。

 〈1〉基礎トレーニングの徹底 中国は体操界では異例とも言える一部、重りを使ったトレーニングを実施。ダンベルを使って肩甲骨周りを鍛えるなどしている。現在の採点方式は、Eスコア(出来栄え点)が重視され、少しの技の乱れが大きな減点につながる。18年世界選手権を経て、水鳥氏は「東京で勝つためにはプレッシャーのかかる中でも、安定した演技ができるか。しっかり基本作りをしていかなければいけない」と、明確な課題を掲げた。日本の美しい体操に加え、中国には「機械的(な正確さ)と、しなやかさがある」と内村。中国を追い越すためにもう1度、体作りから徹底し、技の正確性を高める必要がある。中国の斬新なトレーニングに、水鳥氏は「日本は視野が狭くなっていた。専門的な(フィジカル)指導を入れる必要もある」と語った。

 〈2〉コーチ陣の細かな指導 水鳥氏は「日本はできるだけ選手の感覚を大事にしながらやっている」と言うが、中国は正反対だ。選手が繰り出す技の1つ1つ1つに細かく指導が入る。これには多くの日本選手も気になったようで、「コーチも選手も技の乱れに対して敏感」(白井健三)、「中国のコーチは毎回アドバイスをする」(谷川航)。水鳥氏は「注意すべきところと見守るところと、指導者としてやるべきことが分かった」と、うなづいた。

 また、中国代表には原則、休みがない。練習内容も毎日同じで、基本的な動作の繰り返しがほとんど。内村は「毎日同じで、ほぼ失敗がない。毎日同じような動きができてるっていうのは、気持ちが入ってないとできない。集中力がすさまじい。命を懸けてやっている」と驚く。

 「全て中国のことを取り入れると、日本の良さがなくなってしまう。日本の良さは残し、あとは個人が何を感じて何を取り組むか」と内村。群雄割拠の男子体操界で金メダルをつかむため、今こそ進化が必要となる。(小林 玲花)

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