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御嶽海、三賞獲得した緊迫の舞台裏 議論を切り裂いた「心意気」の言葉

2019年2月16日16時1分  スポーツ報知
  • 初場所で、休場から再出場し白鵬を破った御嶽海

 小結・御嶽海(26)=出羽海=が初場所で史上初めて、途中休場した力士として三賞を獲得した。千秋楽に行われた選考委員会。3横綱を破ったことで候補に挙がり、最終的に25名中19名の委員が賛成。殊勲賞を獲得した。

 実は、選考過程では予断を許さなかった。反対意見も上がった。

 「途中休場の力士に三賞は前例がない」。「負傷した力士を相手にした時の白鵬の気持ちは…」。「立ち合いで変化するような動きもあり三賞にふさわしくない」。

 今場所は初日から稀勢の里(元横綱・荒磯親方)、鶴竜(井筒)の2横綱を破って5連勝。だが6日目の妙義龍戦で敗れた際、左膝付近を負傷し7日目から途中休場した。11日目に復帰。いきなり横綱・白鵬(宮城野)を破ると、そこから3連勝。最終的に8勝4敗3休で勝ち越した。三賞の議論では「途中休場で受賞の前例無し」という事実が重くのしかかる。受賞は見送りの論調が消えなかった。

 その時だ。藤島審判副部長(元大関・武双山)の言葉が低く重く響いた。

 「休場して優勝した力士も過去にはいる。御嶽海の(再)出場で優勝争いの流れが変わった。力士は出たからには100%の状態で相撲を取る。更に御嶽海は今回、優勝争いに絡む力士にも勝っている。出てきた心意気を、買ってやってもいいのでは」。休場明けの取組後も左足を引きずり、万全ではなかったがその中で奮闘していた。説得力のある言葉が、委員の心を動かした。

 心意気でとった殊勲賞。御嶽海は優勝を期していた場所だけに「(ケガは)悔しかった」と言葉を絞り出した。その悔しさを心の奥でたぎらせ、原動力にしたのだろう。復帰後も「絶好調の自分は変わりない。優勝してたかもね」と、けが無く終えていた時の自分を想像した。3横綱に勝ち、今場所優勝の玉鷲(片男波)、優勝次点の貴景勝(千賀ノ浦)にも土をつけたからこその言葉だった。「自分の試練だと思って、乗り越えたらいんじゃないですか」。現実を受け入れ切り替えた。その結果が、殊勲賞という形になった。

 昨年、大関取りに失敗。先場所は負け越し、関脇から小結になった。そしてリベンジに燃えた初場所は、まさかのアクシデントで天国から一度は地獄に落ちた。悔しい場所が続く。闘志むき出しのタイプではないが、春場所(3月10日初日・エディオンアリーナ大阪)で2度目の賜杯を狙ってくるだろう。

 「もう一回、前に出る相撲を見つめ直した。しっかり押していくことを、やっていきたい」。けがも生かしてみせる。後ろは見ず、下がらない。前に前に、進み続ける。(大谷 翔太)

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