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愛される池江璃花子

2019年2月23日12時0分  スポーツ報知
  • 池江璃花子

 海外出張の帰りだった。成田空港に着陸した機内。隣に座っていた他社の記者に、激しく揺さぶられ目を開いた。携帯電話の画面に「池江璃花子」と「白血病」の文字が並んでいた。この数日、同じことを考えている。「なぜ池江が」。考えて考えて、考えてみてもわからない。

 15年1月に水泳担当になった。無知だった。関係者に今注目の選手を聞いた。返ってきた答えが「池江璃花子」だった。伸びしろを感じさせる大きな泳ぎ。透明感のあるたたずまいに、誠意をもった受け答え。すぐにほれ込んだ。スターとしての資質にあふれていた。

 リオ五輪を経験し、大きく飛躍を遂げた。どれだけ強くなっても、池江は変わらなかった。ぶれることない自分を持っていた。日ごと大きくなる周囲の期待にも「あまり周りのことは気にしない」。そして周囲への気遣いは忘れない。一度たりとも池江のことを悪く言う話は聞いたことがない。「聞いてくださいよ~」「やばくないですか?」が口癖。会えば人懐っこい笑顔で受け入れてくれた。

 公表翌日のSNSには「自分に乗り越えられない壁はないと思っています」と記されていた。最後の一文は「必ず戻ってきます」。込められた決意に震えた。初めて池江をインタビューしたのは15年夏だった。大好きなチョコレートケーキを頬張り、オレンジジュースを制服にこぼして大笑い。あれから3年しかたっていないことが信じがたい。池江はこんなにも強い女性に育っていた。

 コナミオープンの会場で選手や観客による寄せ書きが行われた。行き交う人々が足を止め、ペンを手にし、思いを書き込んでいった。その数は1000人を超えた。誰からも愛される池江璃花子という存在。ゆっくりでもいい。時間がかかってもいい。戻ってくることを、祈って待つだけだ。(記者コラム・高木 恵)

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