速見佑斗コーチ、塚原強化本部長から「圧力」引き抜きは「3回あった」 体操・宮川への暴力謝罪

スポーツ報知
会見の冒頭、深々と頭を下げる速見佑斗コーチ(カメラ・佐々木 清勝)

 体操女子で16年リオ五輪代表の宮川紗江(18)に暴力を振るい、日本協会から無期限の登録抹消などの処分を受けた速見佑斗コーチ(34)は5日、都内で会見し、宮川がパワハラと指摘した塚原千恵子・強化本部長(71)による朝日生命体操クラブへの引き抜き行為は「3回あった」と証言。また、千恵子氏には「怖くて何も言えなかった」と自身も圧力を感じていたことも告白した。宮川に対しては「つらい思いをさせている原因は全て私」と謝罪した。

 速見氏は自分の非を全面的に認め、100人を優に超える報道陣の前で何度も頭を下げた。宮川には数年間、暴力を振るい「気持ちが入っておらず、危険だと思ったときに、叩いてでも分からせないといけないと思った」と、頬の平手打ちやお尻を蹴ったという。自身の暴力が引き金で問題に発展し、「私の暴力がなかったら宮川選手の会見も必要なかった。今後一切、暴力行為はしない」と語った。

 一方で、塚原千恵子・強化本部長による度重なる勧誘行為も明かした。千恵子氏が監督を務める朝日生命に引き抜かれそうになったことは「3回あった」とした。初めては宮川が中学3年時の2014年で、朝日生命のコーチから食事の席で「(2人)セットで入ってほしい」と誘われた。

 昨年10月の世界選手権時には、速見氏が千恵子氏の付き人から「朝日生命に入れば(千恵子氏が)良くしてくれるわよ」と再度説得されたという。さらに今年7月の合宿では、宮川が直接、勧誘を受けた。千恵子氏は一切の勧誘行為を否定しているが、速見氏は「(次は)宮川選手の番かなと感じた」と過去にも引き抜きが頻繁に行われていたことを示唆した。

 千恵子氏からのパワハラ発言が「高圧的だった」と主張する宮川には、速見氏も「自分の意見を言ったら意地悪されるんじゃないかって、怖くて言えない部分がある」とコーチ陣も圧力を感じていた実情を明かした。さらに、リオ五輪後の16年冬、宮川が東京五輪の強化プロジェクトへの参加を辞退して以降、ナショナルトレーニングセンター(NTC)の利用を制限され、海外試合への派遣もなくなった。昨年7月には千恵子氏に「どうしてNTCを使ってるの? だめよ、(プロジェクトに)入ってないから」と揺さぶりとも受け取れる言葉を告げられ、納得がいかなかった速見氏は言い争いもしたという。

 宮川は「速見コーチと東京五輪を目指したい」という強い意志を持っている。約1時間半にわたった会見で、速見氏も「純粋に強くなりたいと思ってやってきたことは事実。宮川選手が望むことをかなえてあげたい」と、出直しを希望した。

 ■速見氏に聞く

 ―無期限登録抹消処分について。

 「妥当な処分だと思っている」

 ―暴力は止められなかったのか。

 「本当に危険を伴う場面では、叩いてでも教えることが必要だと思ったが、ここ数年は良くないと分かっていながら我慢できずに叩いたこともある」

 ―宮川への思い。

 「暴力行為はどういう理由であれ、間違った指導というのを、私も宮川選手に教えてあげられなかった。申し訳なく思う。真摯(しんし)に反省し、再出発を切りたい」

 ―千恵子氏はどんな指導者か。

 「素晴らしいコーチで、自分の考えや思い描いたことに信念を持った方。でも(互いの)ストレートな思いでの衝突があった」

 ―塚原夫妻への会見を求めるか。

 「正直に会見の場で話してもらいたい気持ちはある」

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