塚原千恵子氏、調査結果待たず進退「騒ぎが収束しなければ考えたい」

スポーツ報知
朝日生命体操クラブで取材に応じた塚原千恵子氏(左)と塚原光男氏

 日本体操協会の塚原千恵子強化本部長(71)と夫の塚原光男副会長(70)が10日までに都内でスポーツ報知などの取材に応じ、千恵子氏は進退について「騒ぎが収束しなかったら(一時離職や辞任も)考えたい」と打ち明けた。16年リオ五輪女子代表の宮川紗江(19)へのパワハラ疑惑と、塚原夫妻が運営する朝日生命体操クラブへの引き抜き行為については、あらためて否定した。

 塚原夫妻は約1時間半、真剣な表情で質問に答えた。東京五輪の団体出場枠もかかる世界選手権が控える大事な段階で騒動が起きたことに、千恵子氏は「選手たちに迷惑をかけているなと感じた。収まるまで静観していたが、私たちも主張しないと誤解されたまま、終わってしまう。私は世界選手権を集大成として、五輪の予選を通過したかった」と素直な思いを打ち明けた。

 夫妻は進退について、パワハラ疑惑を調査する第三者委員会の結果を踏まえて協議すると明かしていた。しかし今回、千恵子氏は「騒ぎが収束しなければ、迷惑をかける人がたくさんいる。そのときは(一時離職や辞任も)考えたい」と、調査結果を待たず身を引くことも示唆した。

 体操界に浮上した千恵子氏の権力問題についても言及。千恵子氏の言動に、宮川は「権力を使った暴力」とし、速見氏も「怖くて、ものを言えない」と主張。「女帝」と呼ばれることには「5年前から(強化本部長)で、ずっとやっているわけではない。今は、権力にすがって生きているみたいな感じで、そこは名誉を回復しないといけない」と主張した。

 数々のパワハラ疑惑についても詳細を語った上で、否定。宮川が東京五輪の強化プロジェクトの参加を拒否したことで海外派遣がなくなったことに、千恵子氏は「海外派遣は若手の育成がメイン。(同じ年でリオ五輪代表の)杉原愛子も行っていない。選手は必ず常務理事会で決めている」と主張。さらに「五輪に出られなくなるわよ」発言については「東京五輪の団体は4人と狭き門。宮川選手は(現状)6、7位で『もっと頑張らないと五輪にいけないよ』という意味」と説明した。朝日生命への勧誘については光男氏が「(当時の)練習環境が良くなくて、相談もあった。手を差し伸べたつもりだった」と説明した。

 「こんな騒ぎになるとは思わなかった」と千恵子氏も驚くほど問題は長期化。これ以上、世界選手権への影響が出ないようにするためにも「これで(取材は)最後にしようと思う。協会が決めることだが、必要だと思ったら力を貸したい」と体操愛を強調した。

 ◆宮川紗江を巡る経過

 ▼8月15日 日本協会が宮川に暴力を振るったとして速見コーチに対する処分を発表。

 ▼同29日 宮川が会見し、塚原夫妻からパワハラを受けたと逆告発。

 ▼同30日 日本協会がパワハラ問題対策について緊急会議を開き、第三者委員会設置を決定。

 ▼同31日 塚原夫妻が代理人を通じて見解を発表。パワハラを指摘された言動を完全否定。

 ▼9月2日 塚原夫妻が代理人を通じて宮川に謝罪する声明を発表。

 ▼同5日 速見コーチが都内で会見。宮川への暴力行為を謝罪。

 ▼同7日 第三者委員会が発足する。

 ◆塚原 千恵子(つかはら・ちえこ)1947年8月12日、長崎県出身。71歳。元体操選手。68年メキシコ市五輪女子個人総合19位、女子団体4位。70年世界選手権で女子団体4位。72年に光男氏と結婚し現役を引退した。76年にモントリオール五輪女子代表のチームリーダーを務めた。2002年に強化本部長就任。12年ロンドン五輪後に退くも14年に復帰した。

 ◆塚原 光男(つかはら・みつお)1947年12月22日、東京都出身。70歳。日体大卒。68年メキシコ市、72年ミュンヘン、76年モントリオール五輪の3大会で5つの金メダルを獲得。鉄棒では「月面宙返り(ムーンサルト)」を開発した。83~92年は女子代表コーチ、2004年アテネ、08年北京五輪では日本代表の総監督を務めた。05年に日本体操協会副会長に就任。長男・直也はアテネ五輪で団体総合金メダルを獲得している。

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