瀬古利彦氏、大迫傑の日本新に「4分台もある」とさらなる記録更新に期待

スポーツ報知
大迫傑

◆シカゴマラソン(7日・米イリノイ州シカゴ)

 男子で大迫傑(すぐる、27)=ナイキ=が日本新記録となる2時間5分50秒で3位となった。設楽悠太(26)=ホンダ=が2月にマークした2時間6分11秒を塗り替えた。6分の壁を破った2020年東京五輪のエース候補に、日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏(62)は「4分台もある」とさらなる記録の更新を期待した。五輪の長距離で2大会連続2冠のモハメド・ファラー(英国)が2時間5分11秒でマラソン初優勝。

 25キロからペースが急激に上がる激しい戦いに食らいつき、大迫が、日本新をマークした。「ペースは意識していなかったが、最後の2、3キロでいけると思った。やってきたことは間違いじゃない」。米国でのプロ生活で培った精神力にトラック競技で磨いたスピードが融合し、3回目のマラソンで日本男子未到の5分台を記録した。

 走りで光ったのは、後半のペースアップだ。25キロまでの5キロごとのラップタイムは14分44秒が最速。15分台も2度あったが25~30キロ、30~35キロは14分台半ばで駆け抜け、きつい35~40キロも14分31秒と踏ん張った。2月の東京で前日本記録をつくった設楽悠は30キロまでを14分50秒台で刻み、終盤にやや落ちる展開。大迫は、前半からペースが大きく上下した先頭集団で冷静に粘り、勝負どころで健闘。最後に上位2人に突き放されたが、スピードだけでなく強さも示した。

 走る度に自己記録を更新している大迫に、瀬古リーダーはさらなる記録更新を期待した。8日に出雲駅伝会場で取材に応じ「湿度も高く、ペースメーカーも安定しない中でさすが。もっと良いコンディションなら2時間4分台もある」と、5分の壁突破を明言。「本当に力がついてきた。男子は五輪で戦える雰囲気になってきた」と声を弾ませた。

 早大を卒業後、2014年に米オレゴン州を拠点とするナイキの強化プロジェクトに参加。今回優勝したファラーやリオデジャネイロ五輪3位のラップ(米国)と同じ環境で力をつけた。「彼らが強くなっていく軌跡が見えたし、存在がモチベーションになった」。ピート・ジュリアン・コーチは「厳しいラスト10キロに向けた準備をし、最後まで力強く走った」と成長に目を細めた。

 この大会で日本男子が表彰台に上がるのは04年大会3位の高岡寿成以来14年ぶりで、日本新記録に日本実業団陸上連合から1億円の報奨金が贈られる。メダルを見据える20年の東京五輪のエース候補は「記録は意味がなく、順位が大事。しっかりと勝負できる力を高めていきたい」と言う。来年3月3日の東京マラソンでは設楽悠との新旧日本記録保持者対決が予定される。記録に加え、勝負にもこだわっていく。

 ■最後の2キロで記録更新確信

 ◆大迫に聞く

 ―2時間5分台。

 「前半が遅かったのでどうなるかと思ったが、30キロからペースが上がった。最後の2キロぐらいで(記録更新まで)いけるかなと思った」

 ―給水のトラブルやペースの上下もあった。

 「最初の給水で他の選手が自分のを取って動揺もあった。ペースの上げ下げがあったが、自分の力を出しすぎないように省エネを心がけた」

 ―米国で鍛えてきた。

 「コーチとの関係も良好だし、向かっている方向は間違いではないと思う」

 ―世界選手権や五輪でのメダル獲得、2時間4分台と期待が膨らむ。

 「そこ(4分台)までは考えていない。いずれは無理ではない記録だと思うが、記録より今回の上位2人や他の選手も含めて、少しでも近づけていけるか、勝負していけるかということを考えたい」

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