松本薫、引退示唆…初戦敗退で東京五輪絶望的“野獣”から闘争心消えた

スポーツ報知
女子57キロ級1回戦で敗退し肩を落とす松本薫(カメラ・生澤 英里香)

◆柔道 講道館杯全日本体重別選手権 最終日 ▽女子57キロ級1回戦 ○高野綺海(小外掛け 延長9分5秒)松本薫●(4日・千葉ポートアリーナ)

 男女7階級が行われ、女子57キロ級で12年ロンドン五輪金メダルの松本薫(31)=ベネシード=は1回戦で敗退。20年東京五輪の出場が絶望的となり、競技の第一線から退く意向を示した。同48キロ級は芳田真(さな、17)=滋賀・比叡山高=が初優勝。男子90キロ級は16年リオ五輪金メダルのベイカー茉秋(24)=日本中央競馬会=が初めて制した。同100キロ級は左肩手術から復帰した羽賀龍之介(27)=旭化成=が準優勝だった。

 闘志むき出しのスタイルから“野獣”の異名を取った松本の心は、敗戦後も意外なほど落ち着いていた。「今まであった(負けて)悔しい気持ちが今の私にはない。勝負師としては次のステップに行ってるのかな」。無念の初戦敗退を複雑な表情で振り返った。

 「決勝まで上がれなかったら、今後の道も考えていかなきゃなと思ってました」が、代表争いに望みをつなぐグランドスラム(GS)大阪の出場を逃し、3大会連続の五輪出場は絶望的となった。今後については「『2人目(の子供)が欲しい』『現役続行』『現役を退いて次の道を探す』の3つの想定がある」と説明。引退を選ぶ可能性は「フィフティ・フィフティ。会社にも相談して」としたが、東京五輪は「今日負けたので、可能性が0%です」と明言。競技の第一線から退く考えを示した。

 16年リオ五輪で銅メダルを獲得後に当面の休養を宣言し、同年11月に一般男性と結婚した。昨年7月に第1子となる女児の出産を公表したが、出産1か月後には練習を再開し、今年6月の全日本実業団体対抗大会で実戦に復帰。「結婚しても、子供を産んでも(柔道が)出来るという形を少しでも残せたらいい」。子育てと自身の夢を両立しながら奮闘を続けてきた。

 だが、復帰後の強化合宿で世代交代を実感するようにもなった。今年の世界選手権で金メダルを獲得した芳田司(23)=コマツ=らに乱取りを挑まれ「若い子が『もう私の階級だ』っていう思いで投げに来て。ずっと私が居続けたら柔道界は衰退する。やっとみんなが自覚や責任を持てたんだなとうれしかった」。穏やかなまなざしで次世代に夢を託した。(林 直史)

 ◆松本 薫(まつもと・かおり)1987年9月11日、金沢市生まれ。31歳。6歳で柔道を始め、兼六中3年時の2002年全国中学校大会優勝。全日本選抜体重別は4度優勝。10、15年世界選手権57キロ級金メダル。12年ロンドン五輪同級では日本勢唯一の金メダル。16年リオ五輪は銅。右組み。得意技は足技。163センチ。

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