野口啓代「私のクライミング人生に欠かせないシュテールさん」リレーコラム

スポーツ報知
野口とアンナ・シュテールさん(左)(今年9月の世界選手権で)

 ボルダリングW杯で22勝の最多優勝記録を持つオーストリアのアンナ・シュテールさん(以下、アンナ)は私のクライミング人生に、欠かせない人。初めて出会ったのは、私がボルダリングW杯に出始めた17歳のとき。その頃、W杯の表彰台の一番上に上り続けていたのがアンナでした。一番強くて、かっこいい選手だなって思っていたんですけど、英語も話せず、遠くから見ている存在でしたが、アンナは、いつも話しかけてくれたり、優しくしてくれて。人柄もよく、憧れの選手でした。

 私は08年W杯で初めて優勝しました。その時、真っ先に観客席から駆けてきてくれて「本当におめでとう!」と、喜んでくれたのもアンナでした。トレーニングでオーストリアに行ったときには、ご飯に誘ってくれたり、手料理を振る舞ってくれたこともありました。本当に冬場は「来年はアンナに勝ちたい。アンナも今頃、頑張ってるのかな」って思いながら練習をしていましたね。

 私はすごく体が柔らかくて他の人と違う登りをしているんですけど、アンナが「これは啓代スタイルだ!」って言ってくれたのは印象に残っています。すごく自信になりました。3位だった2016年世界選手権では、アンナが日本の密着番組のインタビューで「私の中では啓代が世界チャンピオンだ」って言ってくれたのもうれしくて、認めてくれてるなって。直接聞いてたら泣いちゃいそう(笑い)。

 アンナはすでに選手を引退してしまったんですけど、私がクライミングを頑張るきっかけをくれた存在で、ここまで成長できました。東京五輪でも、私が活躍していると、きっと喜んでくれると思います。

 ◆野口 啓代(のぐち・あきよ)1989年5月30日、茨城・龍ケ崎市生まれ。29歳。11歳の時にグアム島でフリークライミングを体験。02年に小学6年で全日本ユース選手権制覇。08年ボルダリングW杯で日本女子初優勝。同W杯年間優勝は4回(09、10、14、15年)。今年のアジア大会複合で優勝。165センチ、49キロ。

スポーツ

×