藤光謙司「ゴールが見えない曖昧さが短距離種目の魅力」…リレーコラム

来秋の19年ドーハ世界陸上(カタール)で世界ランキング制度による出場資格付与が見送られ、従来通り参加標準記録突破が基準となりました。ランキングを上げるため、室内大会や海外転戦を計画していた人は拍子抜けした部分もあると思う。ただ記録を出すという根本は、ランキング制も参加標準も同じ。やるべきことは変わりません。今季は故障もあったので、来年はかなり大事なシーズンになる。納得のいく流れができるように、早めの始動も視野に入れています。
シーズンに向け、2~3月はドバイ(UAE)に拠点を置こうと考えています。冬季は気温が30度ほどで、天気もほぼ毎日晴れ。雨の中で練習すれば疲労面にも悪影響がありますから、天候が安定しているのは大きいですね。競技場やジムなどの設備も充実しています。地理的に欧州にも近いため、日程や仕上がり次第で欧州の試合に行くかもしれません。
オフ期間にはいろいろな方々と会う時間が取れる分、固定観念にとらわれないように心がけています。先日は「個人レースの時は、バトンを持って走ることはないの?」と聞かれました。その発想は面白いな、と。単純に重い物を持って走るわけですから、プラスになるとは思いませんでした。ただ1600メートルリレーでは、バトンを持った方が上体が浮かずにバランスが取れる人もいる。自分の走りに集中しがちですけど、小さな道具も走りに影響する。細部に気を使う大切さを再認識する契機になりました。
世界で戦うためのスタートラインとして、200メートル19秒台はクリアすべき目標だと思っています。自己ベストの20秒13と比べ、距離にして約1メートル先。あと半歩ほどなんですが、これがなかなか縮まらないんですよね。正解があったらつまらないし、探しながらやるのは一つの楽しみ。記録に上限がなくてゴールが見えないのも楽しみだし、その反面、ゴールが見えないとやっていられないなと思ったりもして。そんな曖昧さが短距離種目の魅力であり、奥深さかもしれませんね。
◆藤光 謙司(ふじみつ・けんじ)1986年5月1日、さいたま市生まれ。32歳。世界陸上は2009年ベルリン大会で初出場し、17年ロンドン大会男子400メートルリレーのアンカーで銅メダルに貢献。五輪は16年リオ大会200メートルで初出場(予選敗退)。200メートル自己記録は日本歴代3位の20秒13(15年)。182センチ、69キロ。