【箱根への道】駒大・伊東颯汰、空手で鍛えた体幹と負けん気で導く下克上V

スポーツ報知
かつて習っていた空手の強い蹴りを披露した駒大・伊東颯汰(カメラ・川口 浩)

◆駒大 前回12位(53年連続53回目)、予選会1位、出雲不出場、全日本4位

 予選会トップ通過からの本戦Vを目指す駒大が11日、都内の玉川キャンパスで合同取材会を行った。前回10区にエントリーされながら、当日変更で出番なしだった伊東颯汰(2年)が今季は絶好調。空手で鍛えた足腰と体幹の強さ、負けず嫌いな性格を武器に3種目で自己記録を更新した。目標とするOB・大塚祥平(現・九電工)の背中を追い、5区区間賞でチームに勢いをもたらす。

 ブレない走りで、頂点まで上り詰める。伊東は「前回は走ることができず、チームもシード落ち。今回は区間賞の走りで目標の3位以内に貢献したい」と雪辱を誓った。9年ぶりの予選会ではチーム6位の1時間3分13秒。トラックレースでも自己記録を連発し、チームの核となりつつある。

 好調の要因は幼稚園から中学入学時まで続けていた空手だ。「足腰の強さ、しっかりした体幹には自信があります」。大分県大会で優勝するほどの実力だったが、中学時代はサッカーに打ち込み、さらに強靱(きょうじん)なフィジカルを手にした。「兄も空手をしていたので絶対負けたくなかった」と負けず嫌いな性格にも磨きがかかり、チーム内の厳しいメンバー争いに勝ち残った。

 目標とするのは大分東明高、駒大の先輩にあたる「憧れの大塚さん」だ。17年大会5区区間賞の雄姿に魅せられ「自分も箱根の山を走りたい」と練習に励んだ。大塚からは「延々と続く上り坂に心が折れないように、強い気持ちで」とアドバイスされたが「走ることになれば区間賞を狙います。(前回区間賞の)1時間11分を切れればベスト」と気合十分。大八木弘明監督(60)も「1年目は手抜きをしていた(笑い)。でも真面目になったし、自覚を持ち始めた。上り下りに強い選手」と成長に目を細める。

 昨年は空手で鍛えられた蹴りの強さもあってか、右足底を痛めて継続した練習を積めなかった。「違和感があれば超音波治療器や酸素カプセルで対処しています」と準備に抜かりはない。前回は5区で6つ順位を下げたことが響き、チームはシード圏外でのレースを強いられた。「上り切ってからの下りが勝負どころ。動かない体をどう動かすかが大事」。下克上Vへのイメージは出来上がっている。(太田 涼)

 ◆伊東 颯汰(いとう・そうた)1998年6月21日、大分・豊後大野市生まれ。20歳。大分東明高から本格的に陸上を始め、3年連続で全国高校駅伝1区を担った。2017年、駒大経営学部に進学。自己記録は5000メートル14分5秒91、1万メートル28分34秒91、ハーフマラソン1時間3分13秒。18年全日本大学駅伝5区5位。175センチ、60キロ。

 ◆駒大 1964年創部。箱根駅伝には67年に初出場。総合優勝6回。全日本大学駅伝は優勝12回、出雲駅伝は優勝3回。学生3大駅伝通算21勝は日体大と並び歴代1位。2015年からOBで男子マラソン元日本記録保持者の藤田敦史コーチ(42)がスタッフに加わった。長距離部員は選手41人、学生スタッフ5人。タスキ色は藤色。タレント・萩本欽一は仏教学部に在学中。

 ◆予選会からの本戦優勝

 ▽97年・神奈川大 前年4区で途中棄権したが、予選会をトップ通過した勢いで初優勝。

 ▽13年・日体大 前年チームワースト19位に沈んだが、3年生主将の服部翔大を中心に下克上Vを達成した。

 ◆戦力分析 前回、12位に終わり、9年ぶりの参加を強いられた予選会(10月13日)では事実上の史上最速でトップ通過を果たした。「選手層が厚くなった。3番以内に入ります」と大八木監督は胸を張った。鍵は序盤のエース区間。前回、1区の片西は3位と好発進したが、2区の山下は8人に抜かれた。「1区に山下、2区に片西と入れ替えることもある」と指揮官は思案する。
 平成の間に日体大と並ぶ学生3大駅伝歴代最多タイの21回の優勝を重ねてきた。「平成最後の箱根駅伝はいい形で終わりたい」と大八木監督は目を光らせる。

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