【箱根への道】順大・橋本龍一、シード奪回へ世界の走り…6月疲労骨折もオランダで復活

スポーツ報知
オランダでカットした髪形が気に入らず、常にくしを持ち歩いているという橋本龍一(カメラ・生澤 英里香)

◆順大 前回11位(8年連続60回目) 予選会2位、出雲不出場、全日本13位

 前回、14秒差に泣き、3年ぶりにシード落ちした順大を橋本龍一(3年)が押し上げる。今年に入り、日本学生ハーフ7位、関東インカレ1部1万メートル6位と大舞台で力を発揮。11月には有望学生ランナーが派遣されるセブンヒルズロードレース(オランダ)に日本代表として出場し、国際舞台でも経験を積んだ。1万メートル日本学生歴代4位の塩尻和也(4年)の後を継ぎ、真のエースを目指す。

 度胸と粘りで順大エースの系譜に名を連ねる。橋本は3度目の箱根路へ「気負うよりも自分らしく、勝負強さを見せられたら」。今季は大舞台での結果に加え、1万メートルでも28分52秒76と自己記録を更新し勢いに乗る。

 しかし、調子の良さが夏場は裏目に出た。「春先からレースに出場して、関東インカレ、夏合宿と過密日程になってしまった」。6月に右大腿(だいたい)骨を疲労骨折。7~9月は、だましながら走っては痛みが出ての繰り返しだった。9月下旬から本格的な練習を再開し、急ピッチで予選会に間に合わせたが「ツケが回った」と持ち味だった後半に大崩れ。全日本大学駅伝も3区15位と、本来の走りを取り戻すことはできなかった。

 転機は日本代表として出場した11月のセブンヒルズロードレースだった。15キロの世界記録も樹立されたハイレベルな大会で13位と健闘。「トップ選手の背中もろくに見えなかったけど、『これが世界か』と刺激をもらえました」と大きな経験となった。初の海外にも臆することなく、現地では散髪にも挑戦。「『ユア セレクト カット プリーズ!』と分かる単語でお願いしました」と自慢の“オランダヘア”をなびかせる。

 大エース・塩尻とは寮で同室。「部屋ではサナギみたいな人。レースになると蝶(ちょう)になって羽ばたく感じ」と表現する先輩は、4年連続の2区が濃厚だ。橋本は「最後なので塩尻さんとつなぎたい」と1、3区を希望。往路でチームを勢いづけるつもりだ。

 長門俊介監督(34)は「エースを担うのは自分だ、という強い気持ちを持ってほしい。塩尻が抜けた時に真価が問われる」と奮起を促す。橋本は「3位以内という目標へ全力を尽くす。前回のような悔しい思いはもうしない」。塩尻とのタスキリレーを試金石に、次期エースへと飛躍する。(太田 涼)

 ◆橋本 龍一(はしもと・りゅういち)1997年5月19日、神奈川・川崎市生まれ。21歳。法政二高3年時の全国高校駅伝1区33位。2016年、順大スポーツ健康科学部に進学。箱根駅伝は1年6区10位、2年3区7位。自己記録は5000メートル14分0秒29、1万メートル28分52秒76。163センチ、50キロ。

 ◆順大 1952年創部。箱根駅伝には58年に初出場。66年に初優勝し、歴代4位の11回優勝。出雲駅伝は優勝3回(99~2001年)。全日本大学駅伝は00年に優勝し、同年度は学生駅伝3冠。長距離部員は選手67人、学生スタッフ5人。タスキの色は白地に赤。主な陸上部OBはマラソン指導者の小出義雄氏、「初代山の神」今井正人(トヨタ自動車九州)、08年北京五輪400メートルリレー銀メダルの高平慎士氏。

 ◆セブンヒルズロードレース

 オランダ・ナイメーヘンで行われる、文字通り7つの丘を越えて走るタフな15キロのレース。例年、日本学生陸上競技連盟から男女選手を派遣しており、今回の男子は吉田祐也(青学大3年)が10位、橋本が13位。優勝したジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)は従来の記録を8秒更新する41分5秒の世界新記録を樹立した。

 ◆戦力分析

 4年連続2区が濃厚な塩尻に加え、5区・山田、6区・江口ら主要区間を中心に経験者7人が残るのは心強い。1500メートル3分45秒96の野口が予選会でチーム2位に入るなど長い距離にも対応しつつあり、スピードを生かした走りが期待される。

 塩尻の力を十分生かすために、1区は“外せない”。塩尻が出遅れをカバーするのではなく、上位で勝負するための布石区間としたい。長門監督は「野口、清水に加え、力のある3年生がカギ」と話す。5度の逆転Vを達成した「復路の順大」の本領発揮となれば、シード権より上が見えてくる。

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