【箱根への道】前監督パワハラ解任から学生主体チームで3位目指す、日体大・林田主将の1年

スポーツ報知
チームを主将としてけん引する日体大・林田は、銅像の前で「エッサッサ」のポーズをとる(カメラ・相川 和寛)

◆日体大 前回4位(71年連続71回目) 出雲9位、全日本12位

 71年連続71回目の出場となる日体大が17日、横浜市の健志台キャンパスで練習を公開した。9月に前監督がパワハラ問題で解任され、指導体制を刷新。林田元輝主将(4年)を中心に練習メニューや区間配置を決め、学生主体のチームは成長した。もう一人の“監督”として経験した厳しい1年を糧に、目標の3位へ激走を誓った。

 林田は、1月4日の主将就任からの1年を苦笑交じりに振り返った。「思うようにいかないことの方が多かった」。チームを背中で引っ張る力量はなくても「自分にできることをしよう」と、54人の部員全員とコミュニケーションを取りながら、学生3大駅伝3位以内という目標に向けてまとめてきた。

 しかし、9月に前監督がパワハラ問題で解任され、跳躍競技の指導を専門とする棒高跳び前日本記録保持者の小林史明監督(44)と兵庫・西脇工時代に全国高校駅伝で8度の優勝に導いた名伯楽・渡辺公二総監督(81)が就任。指導体制の一新により、練習メニューやメンバー選考まで学生主体で決めるチームに変わった。

 急激な環境の変化には時間がかかり、出雲駅伝は9位、全日本大学駅伝も12位に終わった。「思考が追いつかなかった」。それでも、もう一人の“監督”は諦めなかった。「この1年、どの大学の選手より頭を使ってきた」。思いを伝え、意見を聞くため、週1回のミーティングは2時間を超えることもあった。下方修正しようとした目標も「ブレちゃいけない」と貫いた。

 前回4位のメンバーがこなした練習を参考にして選手たちは徐々に自信をつけてきた。将来、指導者を目指す主将は「いろんな意味で注目されたが、経験で終わらせてはいけない」と語る。メンバー選考も実績は考慮せず、11月の上尾ハーフマラソンと12月の競技会の結果のみを参考にした。

 最初で最後の箱根路に向け「淡々と押していく走りが持ち味」と熊本・九州学院高の恩師・禿雄進(かむろ・ゆうしん)氏も走った9区を希望。「禿先生のように、いつか速い選手よりも強い選手を育てたい」。苦しさを乗り越えた先で強さを見せる。(太田 涼)

 ◆林田 元輝(はやしだ・げんき)1996年9月7日、熊本・宇城市生まれ。22歳。中学まではサッカー部で、熊本・九州学院高で本格的に陸上を始める。自己記録は5000メートル14分16秒40、1万メートル29分26秒60。172センチ、57キロ。

 ◆日体大 1926年創部。箱根駅伝は49年に初出場して以来、連続出場中。優勝10回。出雲駅伝は最高2位(10年)、全日本大学駅伝は優勝11回。学生3大駅伝通算21勝は駒大と並んで最多。長距離部員は選手55人、学生スタッフ6人。タスキ色は白。主な陸上部OBは91年東京世界陸上男子マラソン金の谷口浩美。16年リオ五輪男子体操団体金の白井健三は在学中。

 ◆戦力分析 前回の往路経験者はひとりもいない。序盤、苦しい戦いを強いられることは必至。「2区終了時点で14位あたりを覚悟しているが、3区以降、順位を上げ3位を狙いたい。山の特殊区間がポイントになります」。学生主体のチームをまとめる岡駿杜主務(4年)は戦略の一部を明かす。
 5区は1年時に経験した室伏、6区は前回15位の廻谷の出陣が濃厚。特に廻谷は全日本でエース区間の7区で4位と好走するなど走力はアップしている。復路のスタートで波に乗れば4年連続のシード権確保、さらにその上も見えてくる。

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