吉田沙保里さんの兄・栄利さん、レスリング王国復活へ“沙保里イズム”注入

スポーツ報知
子どもたちを指導する栄利さん

 レスリング女子で五輪3連覇を飾り、今月8日に現役引退を発表した吉田沙保里さん(36)の兄で「一志ジュニアレスリング教室」(三重県)の監督を務める吉田栄利(ひでとし)さん(38)が「札幌ちびっ子レスリングクラブ」(豊平区)で指導し“沙保里イズム”を注入した。11日から4日連続、吉田家の家訓なども伝授。未来の五輪メダリスト誕生を希望した。レスリング王国復活へ、沙保里さんが直接指導に来る可能性もある。

 個人戦206連勝、五輪3連覇など前人未到の偉業を成し遂げた沙保里さんの哲学が伝授された。栄利さんは14年に亡くなった父・栄勝さん(享年61歳)の教えを札幌の子どもたちに授け、エールを送った。

 「今回は精神面鍛錬を重視しました。父から教わり妹も実践してきた『最後まで諦めない』、『無駄な練習はない。努力は必ず報われる』、『今日の悔しさは今日晴らす。明日に持ち越さない』という信念を持ち、未来の五輪メダリストを目指してほしい」。

 栄利さんは、兄・勝幸さん(40)、沙保里さんと共に栄勝さんの熱血指導を受け、中、高校時代に全国制覇。現在は父が指導していた「一志ジュニア」を受け継ぎ、監督を務めている。連日5時間30分の実戦練習では心構えも説いた。

 今回、札幌ちびっ子レスリングクラブの平沢光志(みつし)代表(66)=道レスリング協会理事長=が、栄勝さんと専大時代に同級生の部員だった縁で吉田家の指導が実現した。勝幸さん、沙保里さんとも小学校時代から親交がある。沙保里さんの引退会見に同席した栄利さんは「平沢さんには家族ぐるみでお世話になってきた。北海道の選手育成、強化に少しでもお役に立てればとお受けしました」と話す。

 2月の全日本少年少女選抜選手権(東京)に出場する、沙保里さんのおいとめいも来札。栄利さんの長女・千沙都さん(12)は「五輪で金メダルを取りたい」と、男子相手に強烈なタックルを連発した。対戦した札幌の小林冴祐(さすけ)くん(12)は「構えの低さ、思い切りいいタックルが勉強になりました」と刺激を受けていた。

 札幌ちびっ子クラブは、今年11月の「吉田沙保里杯」(三重)に初めて単独チームで参加を決定。平沢代表は「強豪との対戦は最高の強化。今後は沙保里さんにも指導をお願いし、五輪金メダリスト5人を生んだレスリング強国北海道の復活につなげたい」と期待を口にした。(小林 聖孝)

 ◆北海道レスリング事情 過去五輪では1956年メルボルン大会の池田三男(増毛高出)をはじめ、1964年東京大会の渡辺長武(士別高出)、吉田義勝(旭川商高出)、1968年メキシコ大会の中田茂男(旭川南高出)、1972年ミュンヘン大会の加藤喜代美(旭川商高出)の計5人の金メダリストを生んだ。最近では2004年アテネ大会で田南部力(岩見沢農高出)が銅メダルを取ったが、その後メダリストは出ていない。

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