eスポーツ“2年目”の未来と課題 先駆者ネモ「言葉だけが先行」、新星ジョン「学びたい」…世界的プロゲーマー  

スポーツ報知
名門eスポーツチーム「Team Liquid」に所属するプロゲーマーのネモ(右)、竹内ジョン(カメラ・小泉 洋樹)

 コンピューターゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」に、スポットを当てた新企画「eスポーツ 攻略Ho!」がスタートします。第1回は、オランダと北米を拠点とする世界最大規模のチーム「Team Liquid」(チーム・リキッド)に所属する日本のプロゲーマー・ネモ(34)、竹内ジョン(20)にインタビュー。格闘ゲームが得意ジャンルの2人。先駆者のネモと、新星のジョンが現状を分析し、未来や課題を語った。

 “eスポーツ元年”とも呼ばれた昨年は、1月に国内での普及・振興を目的とした日本eスポーツ連合(JeSU)が発足。特定のゲームタイトルに対するプロライセンスの発行、大会の認定なども行われた。

 ネモは格闘ゲームの世界で10年以上、トップレベルに君臨するレジェンド。プロ転向は16年、30代に入ってから。平日は社会人、週末はプロゲーマーという2足のわらじを履く。現在の盛り上がりを「『eスポーツ』という言葉だけが先行している感覚です。ゲームタイトルを言える人も少ないですから。海外の盛り上がりを国内にどう落とし込めるか、が今の課題です」と冷静に見つめている。

 ネモは、17年10月に大手ゲームソフト販売・開発会社スクウェア・エニックスに転職した。「裁量労働制なので、自分でスケジュール管理をできる。ゲームに理解のある企業だから活動ができている」。年に2、3回が限界だった海外遠征は15回に増えた。金曜に仕事を終えて出発。翌週の月曜朝に帰国し、出社することも可能になったという。

 少年時代はゲームセンターに通い、格闘ゲームに没頭した。「知り合いがプロに転向し、その姿を見て『海外の大会に参加してみたい』と思った。海外の熱気を感じて、サラリーマンをやっているだけの人生はつまらない、好きなことにささげたいと思った」

 米国を中心に、大会規模はどんどん大きくなっている。「15年の格闘ゲーム『ウルトラストリートファイター4』の世界決勝大会『カプコンカップ2015』(サンフランシスコ)で、賞金総額が50万ドル(約5470万円)にはね上がりました。14年までは賞金総額5万ドル(547万円)だったかな。海外の大会に出ていなかった連中が一気に行くようになった」

 海外での実績が認められ、世界で最も成功したチームの一つ、チーム・リキッドに所属。同チームは昨年12月、大手芸能事務所のアミューズとも戦略的パートナーシップ契約を締結した。「メディアへの露出も増えました。『アミューズ所属』と言うと親もすごく喜んでいたし、説得力が出てくる。昔は親の理解を得られず苦労しましたが、今なら許される感覚はあります」

 収入は、どのくらいなのか気になるところだ。「主に会社の給料と所属チームからのスポンサー収入、大会の賞金、メディアの出演料などです。内訳は言えませんが、4ケタ(1000万円以上)はあります」

 ジョンは19歳で名門チームに所属した若手注目株。飛躍のきっかけは16年の国際大会「First Attack」(プエルトリコ)。「ストリートファイターV」では、無名ながら圧倒的な強さで優勝。昨年、日本最大級の格闘ゲーム大会「EVO Japan」に準優勝し、eスポーツの未来を背負うプレーヤーとしても期待されている。

 「優勝をきっかけに、もっと海外の大会に出たい、と思うようになりました。好きなことを(職業として)やって生きていけるのは単純に幸せです」と充実感を漂わせる。

 結果を出すことで家族の理解も得られた。

 「大会優勝後、僕のSNSに祝福のリプライ、メッセージが届くのを見て、大勢の人に認められているというのを分かってくれました。もともとゲームを好きじゃなかった両親も、それからは応援してくれています」

 とにかく練習漬けの日々。「ご飯と寝る時以外は、(画面を)つけています。基本的にはずっとやっています。外出して、夕方から対戦会に参加することもあります。家ではオンライン対戦とトレーニングモード(1人用)を繰り返す。それを延々とやっています」

 海外の大会では、コンディションの維持が大変。「午前10時から午後9時まで続くこともある。緊張状態が続くので、体力の消耗が激しい。集中力の維持も難しい」。「日本からカップ麺を持って行き、大会期間中、そればかり食べている人もいる」が、ジョンの場合は「現地の食べ物に挑戦するのを、一つの楽しみにしている」。食事が気分転換の方法だという。

 夢は米国を拠点にすること。「国立競技場みたいなスタジアムを使って大会を開いている。競技ゲームを一番早く確立した国なので、プロゲーマーの働き方や運営方法だったりを、現地で学びたい。機会があれば、留学してみたいです」

 今年、欲しいタイトルがある。「(昨年準優勝だった)『EVO Japan』。実力がないと、スポンサーも離れてしまう。今はゲームを頑張らなきゃということで頭がいっぱいです。もっともっと実力を上げて、落ち着いて業界の発展の力になれたらと思います」(加茂 伸太郎)

 ◆ネモ(本名・根本直樹、ねもと・なおき)1985年1月5日、東京・新宿区生まれ。34歳。ゲームタイトルは「ストリートファイター アーケードエディション」。主な使用キャラはユリアン。TGS2017「昇龍拳(SHORYUKEN)トーナメント」優勝、「Red Bull Kumite 2017」優勝など。

 ◆竹内 ジョン(本名・竹内亮太、たけうち・りょうた)1998年3月21日、東京・豊島区生まれ。20歳。ジョンの由来は学生時代の愛称から。ゲームタイトルは「ストリートファイターV アーケードエディション」。主な使用キャラはラシード。「First Attack 2016」優勝、「Cannes Winter Clash 2017」優勝など。

 ◆eスポーツ 「エレクトロニック スポーツ」の略称。コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える。野球やサッカー、格闘技、パズル、カードゲームがある。ゲームタイトルが競技種目として公認されるには「競技性、ゲームの稼働実績、継続的大会運営、大会の興行性」を伴うことが条件。日本では昨年から統括組織・日本eスポーツ連合(JeSU)がプロライセンスの発行を始めた。

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