優勝賞金3500万円を全額寄付したボートレーサー守田俊介〈4〉「全額は迷いがあったが…」

スポーツ報知
2015年10月のSGダービー優勝戦で、先頭を走る守田

 東日本大震災から4年が経過した2015年10月25日。40歳になっていた守田は、ダービーで夢のSG初優勝を飾った。賞金3500万円を獲得した。

 SG初優勝となると、慣例で自身が主催の祝勝会を行うケースが多い。出費の相場は数百万円、招待人数、会場の規模によっては1000万円を超えるケースもある。優勝後の数日のうちに、守田は祝勝会をしない代わりに、東日本大震災の被災地に寄付すると決めた。だが、寄付金額は決めかねていた。1000万円、半分、3000万円…、と思案するうちに、母との4年前の会話がふと、頭の中によみがえってきた。「全部寄付するって話をしていたなと思い出した。同じ1分50秒(レースのタイム)で一般戦なら優勝賞金70万円、たまたまSGで奇跡的に3500万円。たまたまが積み重なり、こんなことが起きた。これは3500万円を寄付するべきと思い始めた。全額寄付することが業界とファンへの恩返しにもなるかなと考えましたが、それでもまだ心の中に迷いがあったんですよ」

 揺れ動く心が、全額寄付へ傾く出来事があった。優勝から10日後だ。11月4~6日にレーサー養成所で定期訓練があり、同期の勝野竜司(兵庫)と再会した。何気ない会話の中で、優勝賞金の寄付の話もした。「めっちゃ迷っているけど、全部寄付しようかなと竜ちゃんに話したら、『ホンマか! 俺ら同期の誇りや!』ってすごく感動してくれた。竜ちゃんは阪神大震災の時に寄付をしたらしく、その時の経験談をしてくれた。背中を押してくれたのが竜ちゃん。すごく迷って、最初やるって言っていたのにやれなかった自分がいて…。有言実行、ここはやるべきと。一生、こんなことができるのは今しかないって」

 定期訓練の翌日の11月7日に守田は自身のSNSで、「寄付」を記した。「優勝おめでとうに始まり、寄付のことなど、すごく反響があった。ギャンブルの駒としか見られていないと思っていたのに、自分のことのように喜んでくれる人、親のような気持ちで見守ってくれている人がいっぱいいるんだと、すごく感動した。メッセージを見ると込み上げるものがあって。ファンに対しての意識も変わった。今まで気付かなかった。みんなのコメントも寄付の後押しになった。自分が3500万円をもらったらアカンと思ってくるんですよ、みんなに返そうって―」(佐々木伸)

 ◆ボートレーサー 現役のボートレーサーは1590人。うち213人が女子。ほとんどがレーサー養成所に入所するまでボート未経験。ほかの一般的なスポーツと違い、男女が同じレースで戦う。平均勤続年数は約30年、平均引退年齢は約51歳で、年齢を重ねても活躍できる。現在の最年長レーサーは71歳の高塚清一、最年少は18歳の山崎小葉音。平均年収は約1600万円。昨年の獲得賞金NO1は2億292万4000円の峰竜太。松井繁は生涯獲得賞金が36億円を突破し、最高記録を更新中。

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