医療態勢整わない会場、選手ファースト徹底を…スケボー伊佐風椰の転倒脳挫傷で記者が提言

スポーツ報知
伊佐風椰

 23日に行われたスケートボード日本オープン・ストリート選手権女子の部(ムラサキパーク東京)に出場し、大会途中の負傷で棄権していた伊佐風椰(いさ・かや、17)=ミキハウス=が脳挫傷と診断されていたことが24日、関係者の話で明らかになった。伊佐は快方に向かってはいるが、脳内に出血も見られるなど、一時は集中治療室にも入るほどのけがだった。大会を取材した東京五輪担当記者が、医療体制の整備を訴えた。

 その光景には正直、あぜんとした。会場で激しく転倒し、動けなくなった伊佐選手を運び出すのに使われたのは、会場にあった木製の机だった。搬送先は救護室ではなく、受け付け用に張られていたテント。つまり、会場には医療体制が全く整っていなかった。伊佐選手は劇的な回復を見せているとはいえ、脳挫傷は選手生命、いや命にかかわりかねないけがだった。

 会場の地面はコンクリートである。ヘルメットが義務づけられてはいるが、きちんと着用していた伊佐選手でもこのようなけがに見舞われた。大きなリスクと、常に隣り合わせなのだ。だが、国内で医療体制が万全という大会は極めて少ない。一方、海外の大会は救急車が会場で待機しており、医療スペースも設置。足を打っただけでもアイシングや湿布で応急処置を施すなど、「選手ファースト」が徹底されており、「なくて当たり前」の日本とは、かなりの格差があるという。

 年齢層の低い競技でもあり、けがの危険性を排除するのは大人の仕事だ。スリルが醍醐味とはいえ、五輪に採用された「スポーツ」である以上、環境整備は急務だろう。

 日本スケートボード協会幹部は「3月と5月の大会では看護師さんに来てもらい、何があっても対応できるようにする」と改善を約束した。伊佐選手は5月の全日本選手権に強い意欲を示していると聞く。この一件を教訓とし、選手も家族も安心して競技に取り組める舞台に変えていってほしいと切に願う。(スケートボード担当・太田 倫)

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