“中大のメガネ君”堀尾謙介、日本人トップ5位で学生初MGC出場権獲得

スポーツ報知
日本人トップの全体5位でゴールする堀尾(カメラ・宮崎 亮太)

◆東京マラソン(3日、東京都庁スタート~東京駅前ゴール=42・195キロ)

 男子は現役学生ランナーの堀尾謙介(中大4年)が、初マラソンで2時間10分21秒をマークして日本人トップの5位に入った。日本人離れした体格、箱根駅伝と東京・浅川の河川敷で培われたタフさで、大学生初のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、20年東京五輪代表選考会)出場権を獲得。箱根から世界への第一関門を突破した。日本記録保持者の大迫傑(27)=ナイキ=は低体温症とみられる体調不良で29キロ付近で途中棄権した。(雨、気温5・7度、湿度58・6%=スタート時)

 曇るメガネとは対照的に、最後の直線で堀尾の行く手を遮るライバルはいなかった。「後続が気になり何度も振り返った。でも、メガネが曇って」。見えない相手を置き去りにし、倒れ込むようにゴールした。雨が降り体感温度が0度近い過酷な条件。約1時間も立ち上がれないほど死力を尽くした。日本勢トップだと知ったのはゴール後だった。

 初マラソンとは思えない冷静さだった。30キロ付近まで第2集団で体力を温存し、先頭集団から脱落した中村匠吾(富士通)らを黙々と抜き去った。「給水後で追い風もあったので、勝負はここ」と35キロ過ぎにペースアップ。「行けるところまで行こう」。勝負どころで大胆に攻め、最年少22歳でMGC切符を手にした。

 悪条件はお手の物だ。大学での4年間は常に向かい風にさらされる河川敷を走り込んだ。3年連続2区を走った箱根駅伝では、新春の寒さを経験。「コンディションが悪くなればなるほど、自分に有利。最高の天気」。有力選手が手を焼いた冷たい雨にも体は耐え、心は折れなかった。

 中大2年時には93年ぶりに箱根駅伝出場を逃した。関東学生連合チームで出場するも区間最下位相当。悔しさを糧に中大のエースから日本代表を争うまで成長した。10年に日本人としてただ一人、東京マラソンを制している名ランナーの中大・藤原正和監督は「脚に加え、アキレス腱(けん)も長い。まるでケニア人選手」と身長183センチで日本人離れした体格を絶賛。脚が長いことでストライドが伸び、長いアキレス腱が爆発的なスピードを生む。5000メートルでは外国人留学生を抑え、今季日本人学生最高の13分33秒51をマークするなど潜在能力も高い。

 4月からは18年福岡国際で14年ぶり日本人Vを果たした服部勇馬ら実業団最多タイ、3人がMGC出場権を持つトヨタ自動車へ進む。「本当に現実なのか、まだ実感がない。本格的にマラソンに取り組んでMGCに向かいたい」。黒縁メガネの奥で輝く瞳は、東京五輪を見据えている。(太田 涼)

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