“元祖・山の神”今井正人、長男の直筆ボトル取り損ね奮起 MGC出場権獲得「取れて良かった」

スポーツ報知
今井は力を振り絞り6位でゴールする

◆東京マラソン(3日、東京都庁スタート~東京駅前ゴール=42・195キロ)

 順大出身で、箱根駅伝の“元祖・山の神”こと今井正人(34)=トヨタ自動車九州=が2時間10分30秒で日本人2位(全体6位)に入り、MGC出場権を獲得した。青学大OBの“3代目・山の神”こと神野大地(25)=セルソース=も2時間11分5秒で走り、ワイルドカードでのMGC切符を獲得。日本記録保持者の大迫傑(27)=ナイキ=は寒さの影響もあり、29キロ過ぎで途中棄権した。MGC(9月15日)の出場権をかけたレースは、男子はびわ湖毎日、女子は名古屋ウィメンズ(ともに10日)のみとなった。

 痛恨のミスで逆に燃えた。今井は30キロの給水でボトルを取り損ねた。「長男(秀馬くん)が『頑張るのが男だ』とボトルに書いてくれていたのに。逆にクソ~って思ったのもある」。ガッツポーズで自分を鼓舞しながら懸命に前を追い、40キロ手前で日本人2番手に浮上。2020年東京五輪へ望みをつなぎ、「最低限、MGCと思っていた。取れて良かった」と胸をなで下ろした。

 順大時代に箱根駅伝5区を沸かせた“元祖・山の神”。15年の東京マラソンでは自己記録(2時間7分39秒)で日本人1位となり、北京世界陸上の切符をつかんだが、大会直前に髄膜炎を発症して辞退。以降は選考会で不発が続いた。復活の鍵は発想の転換だ。従来は月間950~1000キロだった練習期間の走行距離を、750~800キロに。「質の高いことはやりつつ、落とす時はしっかり落とした」。がむしゃらに走り込んで不安を消すより、メリハリをつけてコンディションを整えた。34歳、円熟の仕上げだった。

 初の五輪切符を目指してMGCに挑む。「後半の落ち込みや40キロ過ぎてからの部分など、課題や目標を明確にしてやりたい」と見据えた。一発勝負の舞台へ滑り込んだベテランから、さらなる上昇気配が漂う。(細野 友司)

 ◇山の神 箱根駅伝で最も過酷な5区の山上り。05年大会で15位でタスキを受けた今井は、区間新で11人をごぼう抜き。驚異的な走りから「山の神」の異名を取った。2代目は柏原竜二(東洋大)。09年、1年生ながら8人抜きで当時の区間記録を更新。4年連続区間賞を獲得した。卒業後は富士通に入り、負傷の影響で17年に現役引退。現在は富士通のスポーツチームのサポート活動をしている。3代目の神野は3年生で迎えた15年、一部コース変更のために参考記録扱いとなった柏原の記録を24秒更新。翌年は区間2位。

 ◆今井 正人(いまい・まさと)1984年4月2日、福島・南相馬市生まれ。34歳。原町高1年から陸上を始め、順大では箱根駅伝1年2区10位、2~4年は山上りの5区で3年連続区間新をたたき出し「山の神」の称号を手にした。卒業後はトヨタ自動車九州に入社し、2008年北海道で初マラソン。15年東京では2時間7分39秒の自己記録で日本人最上位の7位。169センチ、56キロ。

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