稀勢の里、連勝ストップ!平幕・千代大龍に完敗

スポーツ報知
千代大龍(右)に押し出しで敗れた稀勢の里(カメラ・酒井 悠一)

◆大相撲秋場所6日目 ○千代大龍(押し出し)稀勢の里●(14日・両国国技館)

 8場所連続休場からの復活を目指す横綱・稀勢の里に今場所初黒星がついた。前頭2枚目・千代大龍に押し出されて13個目の金星を配給。進退をかけて出場した土俵で勝ち星を拾ってきたが、239日ぶりに敗れ、3横綱で最初に土がついた。横綱・白鵬は行司差し違えで前頭3枚目・正代を下し、横綱・鶴竜とともに無敗をキープ。大関取りに挑む関脇・御嶽海は大関・豪栄道に敗れ、初黒星。大関・高安、前頭9枚目・北勝富士を含め全勝は4人となった。

 稀勢の里に土がつき、座布団が痛々しく舞った。復活を後押ししていた約1万1000人の「声」は悲鳴に変わった。千代大龍の強烈な立ち合いを受け止めると課題だった腰高姿勢に。挽回しようとしても相手まわしは遠く、はたかれ、前のめりになって押し出された。平幕相手にわずか3秒2の完敗。大関時代の5年前に2場所連続で敗れている。花道を引き揚げると、険しい表情のまま唇をかんだ。

 苦戦の連続ながら白星を積み重ねてきたが、6日目にしてつまずいた。13日の横綱審議委員会による本場所総見では、進退問題をクリアする最低条件として2ケタ勝利を和製横綱に“提示”する意見も出された。04年九州場所の新入幕以降、初日から6連勝したのは過去7場所あり、いずれも10勝以上をマークしていた。吉兆データを惜しくも手に入れ損ねた。

 連勝は止まっても、復活を願うファンの思いは不変だ。秋場所から国技館で現役3横綱3大関に加え、昭和の大横綱・双葉山や江戸時代の力士の錦絵が印刷された「大相撲はがき」の販売が開始。歴代のレジェンドを抑え、5日目の正午に稀勢の里が一番乗りで売り切れた。圧倒的な人気ぶりに、関係者は「中日(16日)に再入荷する予定です」と対応に追われるほどだった。

 相撲人生を懸けた15日間で、ひとつの黒星に沈むわけにはいかない。八角理事長(元横綱・北勝海)は「立ち合いは悪くない。頭から行っていた。相手の流れに乗ってしまったということ。明日からでしょう」と擁護した。

 支度部屋で髪を結う間は、決して下は向かず、じっと正面を見つめたまま。報道陣の質問には一度だけ口を開いた。「明日は明日で、う~ん…。また、やっていきたい」。慎重に言葉を選び、静かに気持ちを切り替えた。(小沼 春彦)

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