稀勢の里、9場所ぶり勝ち越し 立ち合い3度合わずも「集中してしっかり相撲を取ろうと…」

スポーツ報知
稀勢の里(左)が遠藤を寄り切り、勝ち越しを決めた(カメラ・森田 俊弥)

◆大相撲秋場所10日目 ○稀勢の里(寄り切り)遠藤●(18日・両国国技館)

 横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=が9場所ぶりの勝ち越しを決めた。3度の立ち合い不成立の末に、前頭3枚目・遠藤(27)=追手風=を寄り切った。年6場所制(1958年)以降、3場所以上連続で全休した横綱8人のうち、復帰場所で勝ち越した6人は全て10勝以上。横綱審議委員会が進退問題クリアへ“提示”している2ケタ白星へ吉兆だ。白鵬、鶴竜は無敗を守り、昨年夏場所以来の横綱2人が10連勝。稀勢の里は直接対決を残しており、逆転優勝へ闘志は衰えていない。

 異例の展開にも、稀勢の里に心の乱れはなかった。遠藤との人気力士対決は、3度の手つき不十分で立ち合いが成立しなかった。館内が騒然となる中、4度目でようやく立つと、右の強烈な張りと得意の左差し。右から相手を抱え込み余裕の表情で寄り切った。珍しい張り差しへの質問には無言だったが、9場所ぶりの勝ち越しには「集中してしっかり相撲を取ろうとしていた」と、つぶやいた。

 取組後、両者は審判部に呼び出され、数秒ではあったが注意を受けた。藤島審判長(元大関・武双山)は立ち合い不成立について「(手つき不十分は)どちらも」と苦言。一方で、進退を懸けた今場所の8勝目には「横綱には失礼かもしれないが、ひとつの区切り。この1年間(勝ち越しに)かかわることがなかった。今後も稀勢の里らしい相撲が取れるかどうか」と終盤戦の奮起を期待した。

 2敗目を喫した8日目の玉鷲戦は2度目の立ち合いの末に完敗。師匠・田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)も「待ったすると取り乱してしまうが今回は落ち着いていた」と、取り戻しつつある心の余裕に目を細めた。

 幕内通算712勝とし、04年九州場所の同時入幕で、歴代6位の日馬富士(元横綱)に並んだ。3場所以上連続で全休した横綱が復帰場所で勝ち越したのは、89年初場所で優勝した北勝海(八角理事長)ら6人。全員が10勝以上をマークしている。横審が進退問題クリアへ“提示”している2ケタ白星の到達確率は、データ上では100%となった。

 八角理事長も「優勝争いは(横綱としての)務め。よくやっている」と評価した。険しい復活ロードどころか、無敗の白鵬、鶴竜の両横綱を2差で追走して終盤戦に突入する。(小沼 春彦)

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