貴乃花部屋、涙の引っ越し…約8キロ離れた千賀ノ浦部屋で拍手

日本相撲協会を1日付で退職した元貴乃花親方(46)=元横綱=が師匠を務めていた旧貴乃花部屋の力士らが2日、東京・江東区の同部屋から移籍先の台東区・千賀ノ浦部屋へ引っ越しを行った。元の部屋を出る際には幕下・貴公俊(たかよしとし、21)が涙を流す場面もあった。相撲協会の公式サイトからも貴乃花部屋は“消滅”。部屋のホームページも2日までに閉鎖された。新生・千賀ノ浦部屋は3日に初稽古を行う。
車に乗り込み顔覆う貴公俊 午前11時半。シャッターが開けられ、横付けされたワゴン車に旧貴乃花部屋の力士たちは布団や衣装ケースを黙々と積み込んだ。もう戻ることはない。報道陣約50人に地元住民も20人以上が見守った中での無言の作業。寂しさと悲しさが際立った。
貴公俊は車の助手席に乗り込むと、顔をタオルで覆い涙を流した。新十両の今年春場所では支度部屋で付け人に暴力を振るい、引責で元貴乃花親方は親方衆の階級で一番下の「年寄」への降格処分を受けていた。今回の退職劇の責任の一端を感じつつも、退職決意後にかけられた「剛(=貴公俊)が悪いわけじゃない」という師匠の言葉を思い出していたのかもしれない。
同じタイミングで、相撲協会のホームページ(HP)も更新。旧貴乃花部屋の力士8人、世話人、床山の計10人が千賀ノ浦部屋所属に移された。「年寄一覧」などにあった「貴乃花」の名前が消え、部屋一覧からも貴乃花部屋が削除された。旧部屋のHPもこの日までに閉鎖。過去の掲載内容も閲覧できなくなっていた。
この日、引っ越し作業をした旧貴部屋の力士は幕下以下の5人。約8キロ離れた距離にある千賀ノ浦部屋では地元住民らから拍手で迎えられた。「頑張れ」「負けるな」という声を背に、貴公俊は笑顔で“同僚”となる力士らと握手を交わした。荷物を運び込むと新師匠の千賀ノ浦親方(57)=元小結・隆三杉=が双方の力士を集めた。「これからはウチの方針で頑張ってくれるはず。ほんとうに和気あいあいとしていた。心配していません」。移籍を元貴乃花親方から打診された直後は反対する声もあったが、時間が解決した。
小結・貴景勝ら関取衆と付け人は3日から秋巡業に出るが、残った力士は3日にそろって初稽古が待つ。「盛り上げていけるように頑張りたい」。貴乃花部屋の記憶を背負って新たな一歩を踏み出す。