貴ノ岩、損害賠償2413万円求める民事訴訟 日馬富士が示談金50万円提示も

スポーツ報知
元横綱の日馬富士に対し民事訴訟を起こした貴ノ岩

 大相撲の幕内・貴ノ岩(28)=千賀ノ浦=の代理人弁護士が4日、都内の司法記者クラブで会見し、昨年10月に元横綱・日馬富士関から受けた暴行被害で、東京地裁に損害賠償2413万5256円を求める民事訴訟を起こしたと発表した。代理人は民事調停が不調に終わったと報告。調停で50万円を提示した元日馬富士側と開きのある賠償額については「選手生命がなくなる原因にもなる」と妥当性を強調した。

 角界を揺るがした事件は、現役力士が原告となる異例の法廷闘争に突入する。貴ノ岩は昨年10月に元日馬富士から暴行被害を受けて頭部を負傷。同11月の九州場所を休場して十両に転落した。傷害罪で略式起訴された元日馬富士が1月に罰金50万円を納付したことを受け、貴ノ岩側は3月から示談交渉に臨んだが、成立しなかった。

 8月には東京簡裁に民事調停を申し立てるも、第2回調停の9月26日に元日馬富士側の代理人が欠席。会見した貴ノ岩の代理人は「話し合いによる紛争解決ができない」と訴訟に踏み切ったと明かした。

 1日付で日本相撲協会を退職し、前師匠だった元貴乃花親方の関与については「示談交渉などの報告はしている」としつつも「請求金額の指示も相談もしておりません」と否定した。

 和解に至らなかった両者には、提示した損害賠償額に大きな隔たりがある。元日馬富士側から示談交渉時に示されたのは当初30万円。調停で50万円に上積みされたが、2400万円超を求めた貴ノ岩側は「入院費用すら出ない」と受け入れなかった。会見の席上でも「スポーツ選手が傷をつけられた。選手生命がなくなる原因にもなる。貴ノ岩は当初、引退を視野に入れるぐらいの気持ちだった」と、法外請求ではないと訴えた。

 今後、証人として貴ノ岩、元貴乃花親方らを法廷に呼ぶ可能性について、代理人は「なるべくなら避けたいが、そういう展開はあり得る」と否定しなかった。

 ◆けがで相撲が取れない「逸失利益」立証難しい

 元東京地検検事の田中喜代重弁護士は「今回のケースでは逸失利益の算定は、非常に難しい」と語った。

 難しいとしたのは、休業による損害金の算出方法だ。一般的なサラリーマンであれば、給与がはっきりしており、休業期間の逸失利益の算出も難しくはない。ただ、「今回の件で(貴ノ岩に)具体的にどんな影響が出ているのか分からない。そして(負傷で)相撲が取れなくなったと言えるのかどうか。頭部を数針縫ったことが、逸失利益にどう結びつくのか」と解説。懸賞金の逸失などについても「どうやって計算するのか。原告側が立証するのは、大変かもしれない」と語った。

 ◆貴ノ岩側の損害賠償請求の主な算定根拠 給与差額は休場した昨年11月の九州場所後、幕内から十両に転落したことで月給約30万円減。懸賞金の逸失900万円は幕内取組でしか得られないことから発生。過去の実績を踏まえ、1場所60~70本の懸賞本数だったとし、幕内勝率を49%と算定。1場所あたり30本獲得で、昨年九州から十両を過ごした計5場所で150本(本来1本6万2000円だが代理人は6万円計算)となる。

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