稀勢の里が引退表明 3連敗で決断…田子ノ浦親方「昨日の夜、引退しますと話がありました…信じられない」

スポーツ報知
3連敗に元気なく国技館を去る稀勢の里

 第72代横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=が16日、現役引退を表明した。師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)がこの日、東京・江戸川区の田子ノ浦部屋で取材に応じ、昨晩、「(稀勢の里)本人から引退させて下さい、引退します」と伝えられたことを明かした。

 前の日の夜、師匠と2人きりで話し合いの場を持ち30分ほど話をした。引退の理由について、稀勢の里は深くは語らなかったというが、「思っているような相撲が取れていない。横綱は結果を出さないといけないけど、出せていないというのが現実」と師匠は語った。また「そう簡単に決断したことではないと思う」と心境を思いやった。

 話し合いをする際の横綱の表情は「いたっていつも通りでしたけど、色んな思いがあるなという感じでした」と説明。「そうか。ごくろうさん。それ以上は自分は声をかけられなかった」と沈痛な面持ちで話した。引退届けはこれから提出する予定で、八角理事長(元横綱・北勝海)にはすでに報告をすませているという。

 田子ノ浦親方は「結果を出せるなら、本人にももっとやって欲しかった。でも稀勢の里は我慢強いですから。そういう力士が引退を話しすると言うことはそれなりの覚悟と気持ちがあったと思う」と弟子の気持ちを代弁した。

 稀勢の里は2017年初場所で14勝1敗の成績で初優勝し、1998年夏場所後の3代目若乃花以来、19年ぶりとなる日本出身の横綱に昇進。同年春場所では13日目に左腕付け根を負傷しながら出場を続け、決定戦の末に先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)と同じ新横綱優勝を飾った。新横綱の優勝は15日制が定着した49年夏場所以降では95年初場所の貴乃花(現親方)以来22年ぶりの快挙だった。

 しかし、けがを押しての出場の代償は大きく、年6場所制(1958年)以降の横綱ワーストとなる8場所連続休場をするなど、地位にふさわしい力量を示せずにいた。昨年11月の九州場所で、横綱としては87年ぶりに初日から4連敗して途中休場。場所後に行われた横綱審議委員会では、初めて「激励」決議が出された。

 九州の休場を決断する際には「このままでは終われない。もう一度チャンスを下さい」と師匠に直談判。不退転の覚悟で初場所に臨んでいたが、無念の3連敗を喫し、昨年秋場所から不戦敗を除き、3場所にわたって8連敗。貴乃花(99年)の横綱ワースト記録を更新。金星配給も通算18個目の不名誉な記録となった。「本人は一生懸命稽古もやってましたし、出来る事はやって皆さんの前に結果を出せなかったというのは気持ちの面もあったのではないか」と師匠は述べた。

 最後の相撲となった15日は、くしくも父・貞彦さんの73歳の誕生日。日本中から愛された横綱が、ついに土俵を降りることになった。最後に気持ちを問われた親方は「師匠としてはふさわしくないと思うけど、まだ現実を見てないというか、まだそこまで考えられない。考える余裕がない。信じられない」と最後まで視線を落としていた。

 ◆稀勢の里 寛(きせのさと・ゆたか)本名・萩原寛。茨城・牛久市出身、32歳。188センチ、177キロ。02年春場所で鳴戸部屋から初土俵。17歳9か月の新十両(04年夏場所)、18歳3か月の新入幕(同九州場所)はいずれも貴乃花に次ぐ史上2位の若さ。10年九州場所で白鵬の連勝を「63」で止めた。11年九州場所後に大関昇進。13年12月に部屋の名称が田子ノ浦に変更。優勝2回。殊勲賞5回、敢闘賞3回、技能賞1回。得意は左四つ、寄り、突き、押し。

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