【尾車親方の目】稀勢の里との初対面、足腰の強さにうなった

スポーツ報知
04年夏場所2日目、萩原(左、現・稀勢の里)が琴欧州を浴びせ倒しで破り十両初勝利

 日本相撲協会は16日、理事会を開き、第72代横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=の現役引退と年寄「荒磯」襲名を承認した。稀勢の里は両国国技館で会見し、17年間の土俵人生に「一片の悔いもありません」と涙。19年ぶりの日本出身横綱として絶大な人気を誇ったが、左大胸筋などのけがに苦しみ在位はわずか12場所だった。

 大けがをする前の稀勢の里は、すさまじいパワーを持っていた。特に左のおっつけが強烈で、白鵬をも左からのおっつけだけで土俵の外に持っていった。場所前の横審の稽古総見や連合稽古では「今場所はやる」と思ったが、まさかの3連敗。改めて本場所の怖さを思い知らされた。

 初めて近くで見たのは、まだ17歳で関取になった頃だったと思う。頬の赤い若者だったが、元気の良さと足腰の強さが際立っていた。「これが萩原(稀勢の里の本名)か」とうなったものだった。

 昔の匂いがする力士だった。寡黙で周りを寄せ付けない雰囲気。先代の鳴戸親方(元横綱・隆の里)もそうだったが、先代は実はよくしゃべる明るい性格、稀勢の里もウチの部屋の矢後をかわいがってくれたように、寡黙さは表面的なもので本当は明るい横綱だった。今後は親方として立派な力士を育ててほしい。(スポーツ報知評論家)

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