元稀勢の里、裏口断り一般通路でファンサービス 親方デビューは100点満点!

スポーツ報知
国技館内の通路で大勢の観客に囲まれながらも、ファンサービスを行いながら場内を歩いた荒磯親方(カメラ・森田 俊弥)

 16日に現役を引退した大相撲の元横綱・稀勢の里関(32)が17日、荒磯親方としての“初仕事”を行った。

 東京・両国国技館を訪れ、八角理事長(元横綱・北勝海)ら日本相撲協会の関係各所にあいさつ。自身の希望で、初場所5日目の来場者でにぎわう正面入り口から入場し、2階客席やコンコースなど館内を歩きまわって握手攻めにも丁寧に対応。現役時代は勝負に徹する“孤高の横綱”として近寄りがたいイメージだったが、ファンサービスは100点満点だった。また断髪式を行う引退相撲は9月29日の実施が濃厚となった。

 涙の引退会見から一夜明け、真っ先に思いついたのは17年間の相撲人生を支えてくれたファンへの恩返しだった。元稀勢の里関は、16日に年寄「荒磯」を襲名。現役時代と同じ着物姿で国技館を訪れると、初々しくあいさつ回りした。

 関係者は混乱を避けるため、裏口などを利用して一般客の前を極力通らずに各部署を訪れるルートを促したが、首を横に振った。八角理事長との面会を終えると相撲博物館、切符売り場を経由して正面入り口から館内へ。幕下の取組中には2階客席にも顔を出した。15日まで日本中の期待を背負って土俵に立っていた元横綱が目の前に現れるサプライズに、数百人が一瞬にして群がった。

 もみくちゃにされながらも、現役時代は珍しかった笑顔も振りまいた。「国技館の2階に行くことはなかったし、最近は1階にも行くことはなかった。(ファンに)いつも支えてもらった。近くで(接することが)できて良かった」と、ねぎらいの言葉には丁寧に握手で応えた。関係者によると可能な限り一般通路を、しかも遠回りして歩けるように頼んだ粋な計らいだった。

 当面は、田子ノ浦部屋付きの荒磯親方として後進の指導にあたる。この日の朝稽古には姿を現さなかったが「近いうちに(東京・江戸川区の)部屋に行く」と明かした。部屋唯一の関取になった大関・高安(28)には16日夜に電話で「(指導は)任せてください」と宣言。弟弟子の横綱昇進を後押しするべく「三番(稽古)をやる体をつくる」と、引退後もぶつかり稽古だけでなく、相撲も取る決意だ。

 花道警備など本格的な親方業務は、2月9日のNHK福祉大相撲からとなる見込み。「(本場所)土俵に上がれない寂しさはあるが、まだスーツも革靴も履いていないので(引退の)実感はわかない。また一歩一歩ですね」。ファンサービス満点の“デビュー”で長い親方人生が始まった。(小沼 春彦)

 ◆主な人気力士の引退後初仕事

 ▼貴乃花親方(03年、元横綱・貴乃花) 初場所で引退し、初仕事は春場所での十両取組時間帯の花道警備。担当する西花道に姿を見せると、マスコミや一般客が殺到したため、警備担当に警備員が付く人気ぶりだった。

 ▼振分親方(13年、元小結・高見盛) 初場所で引退し、1月31日の評議員会に出席。約7万円で購入した黒のスーツに身を包んだが、なぜかネクタイも黒。報道陣に理由を聞かれると、しどろもどろになった。

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