【新大関・貴景勝の心・技・体】〈上〉小学3年で90キロ父背負って階段ダッシュ

スポーツ報知
相撲大会で表彰された小学3年生の貴景勝

 大相撲で大関昇進が確実になっている関脇・貴景勝(22)=千賀ノ浦=が千秋楽から一夜明けた25日、東大阪市内で会見した。重圧の中、戦い抜き昇進ノルマの10勝目に到達。大関になる喜びとともに、「さらにもう一つ上を目指す」と早くも綱取りを目標に掲げた。スポーツ報知では、22歳にして大関に上り詰める貴景勝の「心・技・体」を3回の連載で紹介。初回は「体」に迫る。

 身長175センチ、体重169キロ。小兵の貴景勝は自分よりも10センチ以上背が高い相手に頭でぶちかまし、吹き飛ばす。鋭い立ち合いからの突き押し相撲の原動力は、屈強な下半身だ。体重100キロ以上の付け人を背負ってのスクワットは、楽々と30回をこなす。自らを支える生命線は天性の資質に加え、努力から生まれた。

 小学3年生の時。父親の一哉さんに「俺を背負って、この階段をダッシュしてみろ」と言われた。当時の体重は30キロで、父は90キロ。3倍の重さがある父を背負い、公園にある5、6段の階段を駆け上った。驚きながらも、父は「柔道の井上康生のお父さんが、子供の年齢が同じくらいの時にこれをやらせたらしくて。ウチもやってみたらできた。じゃあウチもいける」。類いまれな下半身の強さと瞬発力を持つ息子に、アスリートの才能を見いだした。

 以来、地獄のトレーニングで鍛え上げた。当時の自宅は、大阪湾を眼下に見下ろす山の中腹にあった。家の前には一直線の坂が約150メートル伸びていた。本数は決めず、限界まで駆け上った。「月、水曜が自主トレ。坂道ダッシュとか。オヤジがやれって。でも、そういうのが今に生きている」。火、木、土、日は相撲の稽古。友人が遊んでいる時も家に帰り、鍛錬した。

 一哉さんは毎日の稽古の送り迎えだけでなく、自主練習も付きっきりで指導をしてくれた。「やっぱり、オヤジにあれだけやってもらっているのにプロで成功しないと、人間として終わっていると思った。失敗できなかった」。角界入りしても感謝を忘れたことはない。平成最後の春場所千秋楽、父の目の前で決めた大関取りこそ最高の親孝行となった。(大谷 翔太)

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