羽生結弦、SP世界最高「自分の記憶と戦っていた」6年ぶりGP初戦首位発進

スポーツ報知
羽生結弦

◆フィギュアスケートGPシリーズ第3戦 フィンランド大会第2日(3日)

 【3日=高木恵】男子五輪連覇の羽生結弦(23)=ANA=がショートプログラム(SP)で106・69点をマークし、首位に立った。今季からのルール変更で昨季までの成績がリセットされたため、世界最高得点。2位に14点近い大差をつけ、4日のフリーで自身初のGP初戦Vに挑む。

 終盤の曲の盛り上がりとともに羽生は気持ちを解放し、思うままにステップを刻んだ。大歓声を感じながら「秋によせて」を全身で演じきった。フィニッシュを決めると、大きく息をついた。得点には驚きの表情。「とりあえず100点を超えられたのは大きい。ほっとしている」。106・69点の世界最高得点(旧ルールでは羽生が17年オータム・クラシックで出した112・72点)で今季GPシリーズを踏み出した。

 「信じて跳び切れた」。つま先を外に広げて滑るイーグルからの冒頭の4回転サルコーは、今季から上限5に広がった出来栄え点(GOE)で4・30を引き出す完璧なジャンプ。続く3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)も相変わらずの美しさだった。ただでさえ高難度の3つのジャンプを、すべて難しいステップから入り、流れるように降りていった。

 勝つための構成に変えた。今季からSPは後半に跳ぶ最後の1本のみ基礎点が1・1倍になる。9月のオータム・クラシックでは曲調に合わせた滑りを最優先し3つのジャンプを前半に入れたが、4回転―3回転の連続トウループを後半に動かした。「勝たなきゃ意味ない。その上に、自分の表現したいことは絶対譲れないという思いがある」。後半に4回転を入れつつ、ジャンプ以外の要素もすべて後半に詰め込んだ。

 羽生の意地だった。「後半に盛り上がるところでスピンとステップをやりたい」。このプログラムを表現する上で後半の3つのスピン、ステップは必要な要素だった。音楽をアレンジし直し、振り付けにも手を加えた。必死の滑り込みで、1か月でこの領域まで完成させた。「満足は出来ていない。ジャンプの出来に関してもまだ出来る」。さらなる記録更新に自信を見せた。

 2010年NHK杯でのGPデビューから昨年まで、8年連続で優勝を逃している鬼門のGP初戦で好スタートを見せた。「この点数から新たに身を引き締める力をもらって、明日につなげたい」。自信をもって、勝ちに行く。

 ◆ユヅに聞く

 ―オータム・クラシックでは0点だったスピンがレベル4に。

 「すごく気持ちを込められた」

 ―どれも難しいジャンプの入り。

 「ジャンプが決まらずにPCS(演技構成点)がつかないことが怖かったが、ジャンプを跳びますよ~という感じはこのプログラムで出したくない。リスクを取りながらも、自分のなかで安定した気持ちで入るようにしている」

 ―ヘルシンキは17年世界選手権優勝の思い出の地か。

 「17年世界選手権ではSPでパーフェクトな演技が出来なかったので、今日は自分の記憶と戦っていた」

 ―曲の表現について。

 「この曲自体、自分がやりたいと思ってやったプログラム。表現したいことはできた」

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