葛西紀明、最後の平成ジャンプ!足跡振り返り「すごいね」17日開幕W杯へ蔵王で直前合宿

スポーツ報知
笑顔で出発ゲートに向かう葛西(カメラ・宮崎 亮太)

 スキージャンプ男子の葛西紀明(46)=土屋ホーム=が8日、17日に開幕するW杯ビスワ大会(ポーランド)の直前合宿を行う山形・蔵王へ向け、新千歳空港から出発した。1989年(平成元年)から世界大会を転戦してきたレジェンドにとって、平成最後の今季は節目の海外挑戦30年目。特大の“平成ジャンプ”を宣言した大ベテランが、14年のW杯ルカ大会(フィンランド)以来4年ぶりの頂点を目指し、最終調整を進めていく。

 葛西は白いニットの帽子をかぶり、にこやかに心境を口にした。「(助走の)スピードは出るようになった。テイクオフがかみ合えば、ぐっと(調子が戻って)来るはず」。今季5試合に出場し、最高成績は15位だが、その表情は晴れやかだ。

 W杯直前はフィンランド合宿が恒例だったが、今年は初めて、風が弱いとされる山形の蔵王のナイター練習で感覚を研ぎ澄ませていく。今季は助走速度を上げるために靴を変え、助走時の重心を前に置くなど試行錯誤を重ねたが、まだ結果が出ておらず「以前使っていたタイプの靴に戻し、調子を取り戻せれば」と葛西。世界で戦う感覚を知っているからこそ、底が平らの靴を、爪先部分が反っている使い慣れたタイプに変えて、微妙なズレを修正していく。

 そんな葛西が初めて海外の大会に挑んだのは、89年の世界選手権ラハティ大会(フィンランド)だった。今季で海外挑戦30年目の節目を迎え、「人生の3分の2をジャンプにささげてきた。30年か。すごいね」と新シーズンを前に感慨深げに話し「平成を飛び続けた男。“平成ジャンプ”は、俺じゃないか!?」と、平成最後の冬に躍進を期した。

 数日前には、トレーニング室やサウナを完備した念願のマイホームに転居。総面積は約100坪と広大ながら、飾っている優勝杯は92年のフライング世界選手権(チェコ)のクリスタルトロフィーのみだ。「優勝以外、興味がないのでね」。身も心も、金メダルへの思いも、衰え知らずの46歳。「調子が戻るまで、もう少し待っていて下さい」。平成のスキージャンプ史を締めくくる大飛行を見せるべく、レジェンドが最終段階に入っていく。(宮崎 亮太)

 ◆葛西の30年 89年2月の世界選手権に初出場、同時に海外のW杯転戦も始まった。五輪は92年のアルベールビル大会から世界最多の8大会出場。94年リレハンメル大会では団体銀、14年ソチ大会ではラージヒル銀、団体銅メダルに輝いた。

 世界選手権は92年のフライング金メダルを含め通算8個のメダルを獲得。昨季までのW杯通算543戦出場(個人戦のみ)は五輪の出場回数とともにギネス世界記録に登録されている。

 世界最長キャリアの中で何度もケガを克服。W杯では他にも42歳176日の最年長優勝、45歳236日の最年長出場記録などを持つ。ちなみに、葛西が世界で戦い始めてから日本の首相は17回も代わっている。

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