紀平梨花の強さの秘密は妥協しない「準備力」…不安すべて排除

スポーツ報知
女子SPでトリプルアクセルを決める紀平梨花(右から左へ連続合成写真=カメラ・相川 和寛)

◆フィギュアスケート グランプリ(GP)ファイナル第1日(6日、カナダ・バンクーバー)

 【6日=高木恵】女子ショートプログラム(SP)で首位に立った紀平梨花(16)=関大KFSC=を支えるのは「準備力」。シニア1年目の快進撃の裏には妥協を知らない強さがあった。男子SPは平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(20)=トヨタ自動車=が91・67点で2位。昨季世界選手権金メダルのネーサン・チェン(19)=米国=が92・99点で首位に立った。

不安すべて排除 紀平は、すべての不安を排除して試合に臨むようにしている。代名詞のトリプルアクセルだけじゃない。こだわりの「準備力」も16歳の武器だ。

 スケート靴のブレードの溶接は人の手で行われるため、1ミリ程度の誤差が生まれることもある。世界を極めた多くのトップスケーターがそうであるように、1ミリの違いにこだわり微調整をする。刃を研ぐ研磨作業も同様。今大会に向けて日本を離れる前日には「何か気になる」と練習リンクから研磨職人の元に駆け込んだ。母・実香さんは「周囲からは気にし過ぎと言われるくらい。すべてしっかり準備しないと気が済まないタイプ」と娘の性格を分析する。

 この日のSPの直前の6分間練習で、靴に巻くテーピングが若干緩めであることが気になった。滑走前に左右の靴にテープをもう1枚巻き直し、好みのきつさに仕上げ「自分の気になることはなくしてリンクに入ることができた」。衣装の左右の重さの違いでさえも繊細に感じ取る。バランスが気になり、試合直前に片方の袖についていた飾りをはがす“緊急措置”を行ったこともあった。

 普段の練習着へのこだわりも強い。足へのフィット感を大切にしており、締まり過ぎも緩過ぎもダメ。メーカーによって違いもあるため必ず試着し、ほどよいきつさのものを求める。トリプルアクセルの安定の理由について「筋肉の調整の仕方が分かってきた。だるい日はほぐしを多めに入れる。そうじゃない日はトレーニングを入れた方がいい」と話したこともある。道具と体への入念な準備が、急成長の原動力だ。

 ◆紀平に聞く 苦戦SP「しっかり改善」

 ―今日の演技は。

 「自分の中では落ち着いてできたし、いい点数がもらえて本当にうれしい」

 ―SPでトリプルアクセルを成功した。

 「今シーズンはショートプログラムで苦戦していたけど、氷の感触とイメージが足りなかったことに尽きると思ったので、しっかり改善できた」

 ―今日のトリプルアクセルに点数をつけるなら。

 「うーーん。90点くらいだと思う。思いっきり高く気持ちのいいジャンプは、ここに来てからそこまで多くなかった。でも安定したジャンプが跳べていたので、その練習通りの成果が出た」

 ―大舞台での世界最高得点については。

 「大舞台という意識をあまりしないで、ここで決めたいという思いが強かった。どの試合でも同じように成績を残したいので、とにかく一つの試合で完璧な演技をしたいと考えていた」

 ◆紀平 梨花(きひら・りか)2002年7月21日、兵庫・西宮市生まれ。16歳。5歳から本格的に競技を始め、16年9月のジュニアGPシリーズ第5戦スロベニア大会で女子史上7人目のトリプルアクセルを成功。16、17年のジュニアGPファイナルは2年連続4位。17年全日本選手権3位。18年にシニアデビューし、日本勢初のGPシリーズ連勝。ネット通信制のN高1年生。154センチ。家族は両親と姉。

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