高橋大輔、2位でも代表辞退「世界と戦う覚悟がない」後輩成長のため

スポーツ報知
鋭いまなざしで演技を行う高橋

◆フィギュアスケート 全日本選手権 最終日(24日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)

 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)2位で10年バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔(32)=関大KFSC=が4位の151・10点、合計239・62点で2位。12年(2位)以来6大会ぶりの表彰台に上がった。復帰会見では「1年限定のつもり」と話していたが「まだ引退しないことは決めている」と現役続行を明言。来年3月の世界選手権(さいたま)代表は辞退した。宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=が合計289・10点で優勝した。

 奇跡の日々が一度、終わりを告げた。高橋は7月1日に4年ぶりの現役復帰を表明してから、ゴールと決めていた全日本で6大会ぶりにメダルを取った。「表彰台に立っちゃってるな(笑い)」。少しこわばった表情で2位の台に立った。目の前に広がった懐かしい景色と、観客からの大歓声がうれしかった。「あれ? 2番? ビックリ。全くイメージしていなかった」。表彰式でやっと現実を受け入れた。

 「逃げ出したい」。高まる緊張感の中、重厚感のある音楽とともにフリーの4分間が始まった。冒頭は復帰後3大会目にして初めて4回転トウループに挑んだが、3回転になった。それでも世界一と言われたステップでは最高のレベル4で魅了した。演技終盤には3連続ジャンプ、2回転ループとミスが続き「やり切れなかった」と悔いを残すも、芸術面を評価する演技構成点は今年出場した3大会で最高の88・50点だった。

 自分のために勝負の世界に戻って来た。「勝てないんだったら現役はやるべきではないって思っていたけど、スケーターそれぞれの思いの中で戦うっていうこともいいんじゃないか」。14年10月の引退後はテレビキャスターや競技解説にも挑戦。戦う側から報じる側となって「全日本で結果を残すために自分を追い込んでいく(選手の)姿を見た。そういう戦い方もアリじゃないか」と復帰を決意した。

 解説などの仕事を断り、1週間に5~6日を練習に割いた。4年間で体も変化し「ジャンプのタイミングや跳び方も変わった」。当時のように栄養士はおらず、食事バランスを考えながら自炊もした。体は徐々に悲鳴を上げ、今夏の北海道合宿で左内転筋を肉離れ。近畿選手権前には古傷の右膝の痛みが悪化。ぎっくり腰にもなった。それでも体と相談しながら「頑張りすぎない」ことを意識して練習を続けた。

 大会後、日本スケート連盟から世界選手権の代表入りを打診されたが辞退した。理由を「現役復帰をスタートしたときに頭になかった。世界と戦う覚悟がない」と説明した。何度も世界での戦いを経験したからこそ「世界選手権でしか経験できないことがある。後輩たちが成長して、羽生君や(宇野)昌磨をどんどん抜かしてレベルアップしてほしい」という思いもあった。

 今季は残りの試合に出場する予定はないが「まだ引退をしないことは決めている。できるなら続けていたい」と来季の現役続行には意欲を見せた。昭和生まれの32歳は、平成最後の全日本で確かな足跡を残した。(小林 玲花)

 長光歌子コーチ「(高橋が宇野)昌磨君と(田中)刑事君と表彰台に乗るなんて、考えてもいないことが現実になった。短期間で本当に頑張っていた。復帰してからすごく楽しかった」

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