宇野昌磨ついに「金」“7度目の正直”シルバーコレクター返上「うれしいよりやりきった」

スポーツ報知
優勝した宇野昌磨(中央)と2位の金博洋(左)、3位のビンセント・ゾウ(カメラ・高木恵)

◆フィギュアスケート 四大陸選手権(9日、米国・アナハイム)

 【9日=高木恵】男子は18年平昌五輪銀メダルでショートプログラム(SP)4位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=が、フリーで今季からのルール改正後の世界最高となる197・36点をマークし、合計289・12点で逆転優勝した。6大会連続2位だった主要国際大会を初めて制し、3月の世界選手権(さいたま)へ弾みをつけた。8日の紀平梨花(16)=関大KFSC=に続き、日本勢の男女同時優勝は14年の無良崇人、村上佳菜子以来5年ぶり。

 極限まで高めた集中が、一気に解かれた。4分間の演技を終えると、宇野は両ひざから崩れ落ちた。氷の上で四つんばいになった体勢のまま、しばらく動けない。「うれしいっていう気持ちよりは、終わった、やり切ったという気持ちだった。本当は寝転びたいくらいだった」。羽生結弦(24)=ANA=の190・43点を上回るルール改正後の世界最高得点をたたき出し、主要国際大会で初めて金メダルを首にかけた。

 目は燃えたぎっていた。「大丈夫。自分はできるんだ。どんなジャンプでも降りてやろう」。自分に言い聞かせてスタート位置についた。冒頭の4回転フリップ、続く4回転トウループで出来栄え点(GOE)2・5点以上を引き出すと、後半の4回転―2回転の連続トウループも成功させた。4回転を4本から3本に減らして臨んだ構成で死力を尽くし、自己ベストを9点近く更新した。

 昨年末の全日本選手権SP直前に負った右足首の捻挫は、じん帯を部分断裂したほどの重傷だった。全日本の10日後に練習を開始したものの、1週間後のSPの曲かけのステップで「バキッ」とやった。今大会の欠場もよぎった。1週間後に2度目の練習再開。今度は4回転トウループで転倒した際に、右足首の上に自分の体が乗った。焦りは募った。

 約1か月で3度目の捻挫に見舞われた2日後の先月31日に米国入りし、大会6日前の1日に滑り始めたばかりだった。試合にはテーピングを施して出場。体力が落ち、不安を打ち消せないまま迎えたSPで出遅れた夜のことだった。「人の話は全然聞かないけど、自分が心を許した人の言うことは聞く」と自己分析する宇野は、体のケアを受けながら出水慎一トレーナーにかけられた言葉が響いた。「競技人生で1位がないのは寂しい。昌磨には世界一になってもらいたい」

 “7度目の正直”でシルバーコレクターを返上し、気持ちが変わった。これまでは順位より演技の内容にこだわってきたが、初めて言い切った。「世界選手権では、もっともっと練習した上での優勝を目指したい」。3月の世界選手権は、今大会で回避したサルコーを投入し、4回転4本の構成で臨む予定。「出水先生のためにも世界一になりたい」。長年憧れ、背中を追ってきた羽生に加え、昨季世界選手権覇者で今季無敗のネーサン・チェン(米国)が立ちはだかる大一番で、頂点を狙いにいく。

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