53歳・岡部哲也が24年ぶり復帰「途中棄権だけは絶対にしない」33位に歓声

スポーツ報知
腰にはコルセットを巻いて臨んだ岡部哲

◆国体スキー第3日(16日、サッポロテイネほか)

 アルペン成年男子C(34歳以上)大回転で、88年に日本人初のW杯表彰台(2位)に立った岡部哲也(53)=Ziel Tokyo―小樽市出身=が東京代表として、95年の引退以来24年ぶりに公式戦出場。実家も被災した昨秋の胆振東部地震を機に地元国体への挑戦を決意したレジェンドが、故障続きの体で33位ながらも歓声を浴びた。少年女子大回転では柳沢梨加(17)=双葉高2年=が初優勝した。

 ゴールの瞬間、口からこぼれたのは歓声ではなく悲鳴。腰に分厚いコルセットを巻いた岡部が痛みをこらえ滑り切った。「たとえ勝てなくても100%を出し切りたい。途中棄権だけは絶対にしないと決めていた」。33位の結果にも、アルペン界の“レジェンド”の表情は達成感に満ちていた。

 88年に回転のW杯で日本人初の表彰台に立つなど数々の結果を残し、95年に現役引退。24年ぶりの公式戦復帰へと突き動かしたのは、昨秋の胆振東部地震だった。小樽市の実家が被害を受け「今こそ、自分にできることがあるんじゃないか。諦めない姿勢を伝えたい」53歳が胸に芽生えた思いを行動に移した。

 簡単な道のりではなかった。国体での復帰に向け準備を進めていた昨年12月、スキー番組の収録中に転倒し、右ふくらはぎ筋を断裂。1月の東京都予選こそ突破したが、今月5日に長野・菅平での学生大会の前走で再び転倒。第3腰椎横突起骨折で全治2か月の診断を受けた。車いすで生活し松葉づえを手放せない状態。出場を止める声もあったが、大好きな酒を断ち「キャリーバッグの取っ手を脇に挟み」13日に北海道に乗り込んだ。

 かつてのヒーローの姿に、会場からはこの日一番の声援が集まった。今後の競技プランは描いておらず、体のケアに専念するが、「年齢は関係ない。目標を立てれば、そこに向かって頑張れる。スキーは最高だって伝われば少しは役目を果たせたかな?」と笑顔。“1日限り”の復帰戦で、故郷に確かな希望を届けた。(川上 大志)

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