羽生結弦、SP3位発進「王者らしく」フリーで史上最大の逆転劇だ

スポーツ報知
男子SPの演技後、両手を広げて歓声に応える羽生結弦(カメラ・相川 和寛)

◆フィギュアスケート 世界選手権 第2日(21日・さいたまスーパーアリーナ)

 男子ショートプログラム(SP)が行われ、右足首の故障明けで4か月ぶりの実戦となる五輪連覇の羽生結弦(24)=ANA=は4回転サルコーのミスが響き、94・87点で3位。107・40点で首位のネーサン・チェン(19)=米国=と12・53点の大差がついた。23日のフリーで大会史上最大逆転のミラクルを起こす。2年連続2位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=は91・40で6位と出遅れた。

 ちらつく不安を払拭できないまま、羽生は冒頭の4回転サルコーを踏み切った。普段はウォームアップなしでも跳べるほど得意とするジャンプは空中で回転がほどけ、2回転になった。「本当に久しぶりに頭が真っ白になった。正直あまり覚えていない」。規定により0点。自己ベストを15・66点下回る94・87点に、表情がこわばった。

 直前の6分間練習で、4回転サルコーを失敗した。軌道に入りながら、他の選手とスペースが重なり跳べない場面もあった。悪いイメージを抱いたまま、スタート位置についた。「不安材料を拾ってしまった。もうちょっと信じ切るべきだった。もっと自信を持って、王者らしくいないといけない」。3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)、後半の4回転―3回転の連続トウループを成功させたが、最後まで笑顔はなかった。

 昨年11月のロシア杯のフリーの朝の練習で右足首を負傷した。4か月ぶりの復帰戦が自国開催。1万8000人を超える満員のファンの前で、自然と力は入った。「ちょっと気張りすぎた。受け止めたい気持ちもあったし、このプログラムへの強い気持ちもあった」。練習ではノーミスを繰り返したSPでの出遅れに「めちゃくちゃ悔しい」と繰り返した。

 1月の全米選手権で、チェンが国際スケート連盟(ISU)非公認ながら342・22点の高得点で3連覇を達成した。「この演技に勝ちたいなと思って練習をしてきた」ことを明かした。会見場ではチェンと競うことについても触れ「やっぱり強い選手と戦えることは楽しい。そういうところが一番スケートをやっていて、うまくなりたいというモチベーションになる」。負けず嫌いの炎が、メラメラと燃えている。

 17年大会で10・66点差を逆転している羽生だが、それを上回る12・53点の大差がついた。07年に現行ルールになって以降、世界選手権での最大逆転は16年大会のハビエル・フェルナンデス(スペイン)の12・04点差。「今悔しいので、この悔しさを使えばいい。不完全燃焼なので、しっかりと燃焼しきれたといえる演技ができるように頑張りたい」。劇的という言葉が似合う王者が、23日のフリーで史上最大の逆転劇を演じきる。(高木 恵)

 ◆世界選手権の最大逆転劇 SPとフリーの合計得点で争う現行方式となった07年以降の男子で、最大逆転差は16年の12.04点。SPでは110.56点で羽生が首位、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)が98.52点で2位。しかし、フリーは羽生に4回転ジャンプでの転倒や手をつくミスが重なり、184.61点(合計295.17点)にとどまった。結局フェルナンデスが216.41点をマークし、合計314.93点として大逆転の2連覇を果たした。

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