羽生結弦「負けは死も同然」の銀…来季は全6種類4回転でチェンに勝つ

スポーツ報知
男子フリーの演技を終え、ガッツポーズをする羽生結弦(カメラ・矢口 亨)

◆フィギュアスケート 世界選手権 最終日(23日・さいたまスーパーアリーナ) 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)3位の羽生結弦

 男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)3位の羽生結弦(24)=ANA=は、ほぼノーミスで206・10点、合計300・97点で銀メダルを獲得した。演技終了時点ではフリー、合計とも現行ルールでの世界最高得点だったが、直後に演技したSP首位のネーサン・チェン(19)=米国=が羽生の記録を更新する216・02点、合計323・42点で2連覇。世界最高得点の出し合いとなるハイレベル決戦に敗れた羽生は、アクセルを含む全6種類の4回転習得に意欲を見せた。

 右手を振り下ろし、ニヤリと笑った。羽生はほぼ完璧な演技で、新ルール導入後初の300点台突破となる世界最高得点をたたき出した。直後に滑ったチェンがさらに上を行くハイレベル決戦。「負けには負けっていう意味しかない。はっきり言って自分にとっては、負けは死も同然だと思っている。ほんと、勝ちたいです」。12・53点の史上最大差逆転を狙ったフリーで、差は22・45点に広がり敗れた。

 冒頭の4回転ループを決めて勢いに乗った。直前の6分間練習でリンクに入った瞬間に、「大好きだ! ありがとう!」と心で叫んだ。SPの時よりも締まった、羽生好みの氷だった。ループやサルコーなど、爪先を使わず刃で踏み切るエッジ系のジャンプは、会場によって異なる氷の質に左右されることが多い。右足首を痛めた影響で平昌五輪では回避した大技は大会前の練習でも苦戦していたが、経験値を最大限に利用した。

 自身が思うスケーターとしての羽生の特色は、「(体の動きを)研究することと、イメージに体を合わせること」がうまいこと。時間が許す限りイメージトレーニングを繰り返した。「リンクの上に自分が降りているイメージを刷り込んだ。ホログラムのように」。朝の公式練習後はリンクサイドに8分居残った。イヤホンで「Origin」の曲を聴きながら振り付けを通し、ノーミスへの自信を深めた。

 昨年11月のロシア杯で右足首を負傷。年明けから氷上練習を再開した。3回転までは痛み止めなしで跳べたが、4回転は無理だった。平昌五輪の時と同じ薬を服用しながら、この2か月間で仕上げてきた。昨年11月のGPシリーズヘルシンキ大会で認定された4回転トウループ―3回転半の大技も、世界で初めて成功させた。満員の約2万人の大歓声を全身で受け止めながら「ただいま」とつぶやいた。

 今季最終戦の演技後は悔しさが募っていった。「SP、フリーで完璧な演技でも届かなかったと思う。地力が足りない。(チェンを)リスペクトするからこそ勝ちたい」。コーチのブライアン・オーサー氏も、「どこで点数を稼ぐか戦略を練らないといけない」と語った。来季へ向け、世界初のアクセルジャンプを始めとした全種類の4回転ジャンプ習得を視野に入れた。「ルッツ、フリップ、アクセル…。アクセルまでやって、フリップやらなきゃいけないでしょ」。チェンというライバルの存在が、また羽生を引き上げる。(高木 恵)

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