強豪撃破引退表明の71歳・蛸島女流六段が最年長勝利

スポーツ報知
引退表明後の最年長勝利を挙げて笑顔を見せる蛸島彰子女流六段

 今期限りでの現役引退を表明している将棋の蛸島(たこじま)彰子女流六段(71)が15日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた第45期女流名人戦予選2回戦で千葉涼子女流四段(37)に後手の114手で勝ち、予選準決勝に進出した。71歳9か月での公式戦勝利は自らの記録を更新する女流棋戦の史上最年長記録となった。

 引退の決断は早過ぎたのでは、と思ってしまう名局だった。会心の勝利を挙げた後の蛸島は「もうプレッシャーもありませんので、のびのび指せたのが良かったんでしょうか」と笑顔を浮かべ「千葉さんは強いので、良い将棋を指せたらいいなということだけ考えていました」と謙虚に述べた。

 昨年12月8日、年齢による衰えなどを理由に引退を表明。今期残された女流名人戦と女流王将戦でいずれも敗退した時点で引退することになったが、同20日の女流名人戦予選1回戦で安食総子女流初段(43)に勝利。さらに今回、過去に女流王将2期のタイトルを誇り、今期も本局まで9勝4敗と勝率ランク3位と好調だった実力者の千葉からも白星を挙げた。

 後手番で中飛車に構えて始まった一局。中盤、攻め駒を封じ込まれたようにも見えた局面で21分の考慮の後に指した△9五歩が好手だった。一見、相手玉に迫るには遠いようにも映る端攻めの歩だが、うまい手順で「と金」に出世させると、一気に相手陣を攻略。終盤でもベテランらしく落ち着いた指し回しでリードを拡大し、完勝した。「丁寧に指して、大きなミスがなかったことが良かったです」。引退は決まっているものの、感想戦では1時間以上にわたって最善の一手を検討。将棋への尽きせぬ情熱を感じさせた。

 1946年に東京都杉並区で生まれた蛸島は、女性が将棋を指すことが一般的ではなかった時代に棋士を志し、棋士養成機関「奨励会」で初段まで昇段。その後、67年に史上初の女流棋士となったレジェンドだ。

 報知新聞社の主催で74年にスタートした初の女流棋戦「女流名人位戦(現・女流名人戦)」で第1期から3連覇する活躍を見せた。獲得タイトルは女流名人4期、女流王将3期の通算7期。日本将棋連盟で女流棋士会長を務めた後、2007年に連盟から分離独立して発足した日本女子プロ将棋協会(LPSA)に移籍し、対局のみならず普及にも尽力してきた。

 女流王将戦の予選を挟んで臨む女流名人戦準決勝では、山田久美女流四段(51)と山口恵梨子女流二段(26)の勝者と対戦。仮に準決勝・決勝と連勝すると、トップ10人で女流名人への挑戦権を争う女流名人リーグに参戦する。蛸島は「(リーグ入り?)いやいや、とんでもないです!」と照れたように語った後で「でも、あと(最少で)2局しかないので、良い将棋を指したいです」と完全燃焼を誓っていた。

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