芥川賞候補の北条裕子さんが釈明…参考文献示さなかった問題で

2018年7月9日21時12分  スポーツ報知

 7月18日に発表される第159回芥川賞の候補作「美しい顔」が講談社の文芸誌「群像」(6月号)に掲載された時に参考文献が示されていなかった問題で、著者の北条裕子さん(32)は9日、発行元の講談社を通じて「新人賞を受賞し、単行本を刊行できるようなことがあれば、その時にそれをすれば良いと思い込んでしまっていた」と釈明。「私の物書きとしての未熟さゆえに、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまったことを、改めて深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

 この作品が群像新人文学賞を受賞し、「群像」に掲載されて以降、ノンフィクション作家・石井光太さんの「遺体 震災、津波の果てに」など複数のノンフィクション作品との類似表現があることが指摘されていた。その上で、参考文献が表示されていなかったことが問題視された。

 講談社は参考文献を表示しなかったことについては謝罪した上で、インターネット上での盗用や剽窃(ひょうせつ)という批判については「誤った認識を与える文言」「一切当たらない」として厳重に抗議。「評価を広く読者と社会に問うため」とし、67ページのこの小説を同社のホームページ上で無料公開した。

 小説は、東日本大震災で被災して母を亡くし、小学1年生の弟とともに避難所で暮らす17歳の少女サナエが主人公。高校で「準ミス」に選ばれたというサナエには、カメラを構えた報道陣が押し寄せる。「お涙頂戴」を求めるマスコミの狙いを見透かしながらも、取材に答えるサナエがあることに気づき、物語が展開していく。

 ストーリーは、釜石市の遺体安置所で医師や消防団員、市職員らを取材した石井さんの作品とは全く異なる。しかし、「チャックからねじれたいくつかの手足が突き出している」(「遺体」)→「チャックから、ねじれたいくつかの手足が突き出していた」(「美しい顔」)など類似した表現が数か所あった。講談社はそれを認めた上で「本作の志向する文学の核心と、作品の価値が損なわれることはありません」と反論したが、石井さんと「遺体」の発行元の新潮社は文書で抗議していた。

 山梨県出身で東京在住の北条さんは、東北の被災地を訪れたことは一度もないという。北条さんはフィクションという形で震災をテーマにした小説を書いたことを「罪深いことだと自覚」した上で発表したことを、以下のように釈明している。

 「なぜなら私には震災が起こってからというもの常に違和感があり、またその違和感が何年経ってもぬぐえなかったからです。理解したいと思いました。主人公の目から、あの震災を見つめ直してみたいと思いました。それは小説でなければやれないことでした」  「小説の主人公を作り上げることでしか理解しえない、理解しようと試みることさえできない人間があると信じました。そしてその理解への過程、試みが、人の悼みに寄り添うことにもなると信じました。それが『美しい顔』という小説になりました」

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