西部邁さん自殺ほう助罪初公判 窪田被告は起訴内容否認

スポーツ報知

 今年1月に亡くなった評論家の西部邁さん(当時78)の自殺を手伝ったとして、自殺ほう助の罪に問われた東京MXテレビ子会社社員・窪田哲学被告(45)と会社員・青山忠司被告(54)の初公判が12日、東京地裁(守下実裁判官)であった。窪田被告は「西部さんの意思で(私の行為は)自殺をほう助するものではありません」と述べ、起訴内容を否認して争う構えをみせた。窪田被告の第2回公判は7月31日。

 青山被告は「間違いございません」と述べ、起訴内容を認めた。青山被告は即日結審。検察は求刑2年とし、弁護側は執行猶予付きの判決を求めた。判決は7月31日に言い渡される。

 起訴状によると、両被告は共謀して1月21日未明、西部さんを東京都大田区の多摩川付近に車で連れて行き、安全ベルト(ハーネス)などを装着させて入水させ、溺死による自殺を手助けしたとしている。

 検察側は冒頭陳述で、2人は事前に現場となった東京・大田区田園調布5丁目の多摩川周辺を下見し、窪田被告は西部さんの代わりに遺書を作成したと指摘。発見時、河川敷にはワープロで打たれた遺書が残されていた。両被告はスーツ姿で出廷し、神妙な表情で冒陳を聞いていた。

 窪田被告は西部さんが出演していた討論番組「西部邁ゼミナール」の制作に関わり、約10年前から交流があったという。青山被告は30年近く西部さんと親交があったといい、西部さんが主宰していた「発言塾」では「塾頭」を務め、討論番組にも出演していた。

 窪田被告は、西部さんの体に装着させた安全ベルト(ハーネス)や重りについて、「あくまで遺体が流されないようにして発見を早めるために用意した」などと述べ、弁護側は「単に西部さんに同行しただけに過ぎない」と主張した。

 青山被告被告人質問で、西部さんから「最期は病院ではなく自殺を選びたい」と聞かされていたという。4年前に西部さんが妻と死別してからその思いが強くなったといい、昨年11月4日に「1月20日に決行する」と告げられたという。青山被告は犯行に使う安全ベルトや中古パソコンなどを購入した。

 1月20日夜、青山被告は窪田容疑者を現場に連れて行くためにレンタカー店でトヨタのヴェルファイアを借り、新宿2丁目で西部さんと待ち合わせて現場に連れて行った。移動中の車内では西部さんが好きだった軍歌の「ダンチョネ節」を流していたという。現場付近に到着後は西部さんと窪田容疑者を見送ったという。

 公判には西部さんの長男の一明さんが証言台に立ち、西部さんが常々自殺願望を話していたことを明かし「家族としては止めて欲しかった」と述べた上で「青山さんが話してくれたことは真実だと信じた」として青山被告とは示談が成立したことを明かした。一方で起訴事実を否認している窪田被告については「警察が示した客観的な証拠と相当の食い違いがある」として納得していないという。証言を終えて傍聴席に戻った後は涙を流していた。

 検察は青山被告に「犯行は公益侵害の可能性が高く悪質」として2年を求刑。弁護側は遺族の処罰感情が緩和していることを考慮し執行猶予付き判決を求めた。

 青山被告は閉廷前に「西部先生はいたずらに世間を騒がせ、迷惑をかけることを好まなかった。何よりも家族を大切にしろ、とおっしゃっていた。にも関わらず裏切ってしまい、お詫びのしようがありません。(西部さんのご遺族には私の)妻や娘のことまで気遣って頂き、感謝のしようがありません。なすべきことは犯した罪を償うことだと思っています」と述べた。

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