電子たばこで覚醒剤!「リキッド」初摘発…熊本で男女数人逮捕

スポーツ報知
全国で初めて摘発された「覚醒剤リキッド」。電子たばこで成分を蒸発させて吸引する(写真はイメージ)

 電子たばこで成分を蒸発させて吸引する「覚醒剤リキッド」を熊本県警が押収していたことが9日、捜査関係者への取材で分かった。覚醒剤リキッドの摘発は全国初。県警は今年3月までに、熊本市内で覚醒剤を所持したなどとして覚醒剤取締法違反の疑いで男女数人を逮捕した。捜査関係者は「電子たばこを吸引すれば外から見て分かりにくい」と摘発の難しさを指摘。若者を中心に新たな手口として広がることが懸念される。

 県警によると、熊本市内で覚醒剤を所持していたなどとして、覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで男女数人を逮捕したのは今年3月。関係先を捜索した際に、電子たばこの市販リキッドを押収した。科捜研で検査したところ、液体の中から覚醒剤の粉末が検出されたという。

 県警は、覚醒剤を吸引できるように加工されたリキッドを使ったとして同法違反の疑いで、別の男を逮捕した。いずれも容疑を認めているという。県警は入手経路の解明を進めている。

 覚醒剤はアルミホイルにくるんであぶって吸引したり、注射器を使用する手口が多いが、リキッドに混合しての吸引は、外観では分かりにくい。「警察にとっては摘発が難しい手口です。厄介なことですが、今後は増えていくでしょう」と危惧するのは、「魔の薬(クスリ)―それでも覚醒剤をやりますか?」の著書がある元刑事の警察ジャーナリスト、北芝健氏だ。

 「車のダッシュボードに電子たばこがたっぷり入っているというのならば別だが、1、2本あってもお巡りさんには分からない。街中で電子たばこを吸っている人を見ても、覚醒剤リキッドを使っているようには見えない。職務質問して現行犯で逮捕するならば、いつも鑑識の専門家を連れて歩かなくてはいけなくなる」と解説した。

 また北芝氏によると、米国ではすでに多い手口だという。「特に違法薬物のバリエーションが多い東海岸のニューヨークなどではずいぶん前からあります。日本では福岡県や東京の足立区中心にはやっているという情報を聞いたことがありますが、摘発が難しいのでしょう。今後警察にとっては新たな課題となると思います」と話した。

 覚醒剤だけでなく、抽出した大麻の成分を含めたリキッドを使うケースもある。今年に入り、関東信越厚生局麻薬取締部がヒップホップミュージシャンの男(44)の自宅から大麻リキッドを押収。東京地検は乾燥大麻などの所持分も含め大麻取締法違反罪で起訴し、5月に東京地裁が懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡している。

 ◆電子たばこ プロピレングリコール、グリセロール、香料などからなるリキッド(液体)を加熱して霧状化する装置。ニコチンを加えることもできる。たばこの葉を燃焼しないで加熱させる「加熱式たばこ」とは異なる。臭いや煙が少ないため、嫌煙ブームの中、愛用者が急増している。タイやシンガポールでは所持だけで違法となる。米国では電池が爆発して使用者が死亡した事故が報告されている。

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