体操協会・具志堅幸司副会長会見、ネットで称賛…危機管理専門家も絶賛

スポーツ報知
日本体操協会の緊急対策会議に出席した具志堅幸司副会長(右)。左は二木英徳会長

 体操女子で2016年リオ五輪代表の宮川紗江(18)が「日本協会にパワハラを受けた」と逆告発した問題で、協会側の立場で30日に会見を行った具志堅幸司副会長(61)がネットを中心に称賛を浴びている。SNSなどでは「スポーツ協会関係者で久し振りにまともな人を見た」などの声が続出。危機管理広報会社・エイレックスの江良俊郎社長は「感情的にならず、合理的な受け答えで世の中の人に納得感をもたらした」と評価した。

 記者の目をきちんと見つめながら、投げかけられた質問には冷静に「その通りです」「それはわかりません」とハッキリ答える姿。具志堅副会長の記者会見は、見ている人たちに、好印象を植え付けたようだ。会見終了後、ネット上には称賛の声。ヤフーのリアルタイム検索で話題のキーワードでも「具志堅副会長」がトップ10に入るなど、大きな注目を集めた。

 具志堅副会長の会見は、何が良かったのだろうか。危機管理広報会社・エイレックスの江良俊郎社長は「まず記者の目をきちんと見て話したことが良かった」と振る舞いに合格点。「我々の(会見などの)トレーニングの基本も『目を見る』ことなんです。信頼感が出ますからね」と説明した。「外見は本当に大事。それだけで、画面を通じた人々の見方が変わる」と服装の清潔感も評価。

 さらに臆測や決めつけで話したり、中途半端な回答がなかったことにも注目し「冷静で合理的に言葉をつなごうとしていたことで、多くの人に好感を持たれたんじゃないでしょうか。(あいまいな言葉に終始した)29日の(山本宜史専務理事の)会見より格段に良かった」と称賛した。

 対照的に、塚原光男副会長がこの日朝、取材を受けて宮川の会見内容を「全部ウソ」とした発言を「最悪の例」として挙げた。「感情的になって全否定したことで、常に『選手のクセに…』と見下している印象を持たれた」とした。「具志堅さんは、身内をかばうのではなく、たしなめる発言をしたことで公平感も出した。この点も素晴らしかった」とした。

 今年に入ってさまざまな問題が噴出したアマスポーツ界。日大アメフト部、日本ボクシング連盟、日本体操協会は対応のまずさで批判を浴び、傷口を広げた。具志堅氏の登場が、事態を良い方向に導くことができるのか、注目だ。

 ◆具志堅幸司という男 具志堅さんの会見がテレビで生中継されると、ネットでは「懐かしい」などの声もあがった。

 体操選手だった具志堅さんが脚光を浴びたのは84年ロス五輪。個人総合と、最も得意だったつり輪で金メダルを獲得。さらに跳馬では脚力に自信がなかったにもかかわらず銀メダル、団体総合と鉄棒で銅メダル。合計5個のメダルを獲得。平行棒の技の名前には「グシケン」の名が付けられた。

 ロス五輪では演技の前には、目を閉じて自分に言い聞かせるように「突破突破…」と唱える姿が注目された。世界選手権では81年から85年までの間で金2個、銀2個、銅4個のメダルを獲得している。

 体操の名門・清風高(大阪)を卒業後、日体大に進んだ。アキレスけん断裂や足首を骨折する大けがをしたが、1980年のモスクワ五輪(日本は不参加)で日本代表に選ばれた。17年には講演でこどもたちに「ピンチはチャンスだ」と語りかけ、諦めずに努力を続けることの大切さを説いていた。引退後は、指導者を目指してドイツ留学。帰国後は日体大の監督、男子日本代表の監督などを歴任し、17年には日体大学長に就任した。

 ◆最近のアマスポーツ界の会見

 ▽ピンクのネクタイ 5月19日、日大アメフト部の悪質タックル問題で、内田正人監督(当時)が謝罪し、辞意を示したが、ピンクのネクタイが「謝罪にふさわしくない」と批判された。また相手大学の「かんせい」を何度も「かんさい」と間違えた。

 ▽司会者がキレる 同23日、内田前監督、井上コーチの会見の司会をした日大広報部の男性が、何度も会見を打ち切ろうとした。記者から「あなたの発言で、日大のブランドが落ちてしまうかもしれない」と言われ「落ちません!」などと回答。

 ▽読み上げただけ 8月8日、日本ボクシング連盟の山根明会長(当時)が大阪市内で辞任表明。しかし声明を読み上げただけで質問を一切受け付けずに5分あまりで退席。

 ▽ささやき会見 同29日、日本体操協会の山本宜史専務理事は、隣の弁護士から耳打ちをされ発言した。

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